私はついでに主人公を攻略した!?

それは、外周で白い塀に囲まれ、尖った建物だ。

塀の内側には、いくつの木の棚が積み上げられていており、棚には淡い光を放つ水晶のような魔石がたくさんが詰まっている。


そう。ここはまさにゲーム「薔薇の王座」の主人公ベラと私が暮らす場所、マリア修道院である。


信仰のある大陸なので、孤児たちは普通に修道院に収容されて生活を送っている。各地方の修道院は、それぞれの太陽神殿から資金と品物を援助されることが多いらしい。

 

この裏路地を出た後、案の定中央通りに戻ったが、ようやく修道院に戻ったときはすでに夕暮れになる。

おなじみの場所を見ると、この体にある感情なのか、ふと安心感が湧いてきた。

中庭に足を踏み入れ、小道に沿って寝室に戻ろうとするちょうどその時、鋭い罵声が突然耳に入る。


「あんた、いい加減ベン君から離れてよ!」


そこに立っているのは、一人金髪の少女と、一つの女子の小グループ。


囲まれている少女は、金色の長い髪と碧色の目、肌の色は玉のように真っ白で、眉目の間は優しいに見える。


――まさにゲームの主人公、ベラ・アクアだ。


そしてグループの頭目は、ルースという名前の赤毛の子だ。ルースは修道院で一番年上の女の子で、自分がお姉様だと思い込んで、ゲームの中の悪役の一人でもあり、ベラの人気に嫉妬し、ずっとベラと彼女の親友であるリアを見て気に入らない。


そしてベンは、修道院で一番ハンサムな少年だ。ルースはずっと彼に好感を持っていたが、あいにくベンが好きな人はベラで、これはさらにルースの嫉妬心を激化させた。


いま、ルースが率いるグループ女子はまるで、ベラを囲むように並んている。


「ちょっと魔力を持っているから、いい気になっているんだね……みんなお前の態度が気に食わないよ!この修道院から出ていけば!?」

そしてあろうことか、ルースはベラを外に押し出しようとしたではないか!?


「やめてよ!」

私は怒りで叫ぶと、ルースたちとベラの間へと入って、両手を広げてベラを守る姿をした。。


「リア、お前……」

今、まさにベラを外に押し出そうとするルースも、回りを囲んでいた他の女子も突然の私の登場に目を丸くした。


「あんたたち、何をしているの!」

私はぎょろりとルースたちを睨みつける。

「ベラをいじめるつもりか!院長に訴えよ!」


「かわいそうだな、リア、お前がこいつを庇うなんて」

ルースはすぐに私の出現に反応して、皮肉な笑みを浮かべた。


「こいつから離れたほうがいいと忠告するわ。さもないと、遅かれ早かれ、お前が好きな人が彼女に奪われる」

 

──ヴィック・イグニスのことか?


ええと、元のリアなら確かに彼を好きになる展開だが、今の私は彼の顔を見るとたちまち逃げるわ!

ほんとに、あの悪魔のような兄弟を避けたい!!!


「それで何?」

私のあんまりにも堂々とする態度のためかな、ルースと他の女の子は何らかの幽霊でも見ているように目を丸くした。


「私の将来の恋しい相手はベラは好きになったら、それはベラが優秀で、優しいからだ。いったい何処かが悪いかしら?ベラは何も間違ったことはしていない!逆に好きな気持ちが報われないだけで、ベラに嫉妬し、いじめさえするあんたたちのほうが醜いよ!」


「……ひっ」

私からこのような答を思わなかったようで、誰もが唖然としていた。


「私だって、世界で一番ベラが好きだ!これからどんな人に出会っても、一番好きなのはベラだ!」


「お前……」

私の話に詰まって何も言えず、ルースは憎々しい目で私を見つめる。


──睨み合う対決か?

ちょっどいいよ、私はこのゲームの最大の悪役なんですけど。


私の凶暴な目つきにビビったのか、誰も話を続ける勇気がない。

ルースは、私に当てつけたいようだが、結局仕方がなく、恨みがましい表情でこの場を去った。そして他の人も次第に散っていく。


一応ホッとし、振り返ってベラの様子を見ようとすると、なぜか彼女の目にはぽろぽろと涙がこぼれ始めた。


「どう、どうしたの!?」

慌てて彼女を慰めたいが、どうしたらいいか分からない。


「さっき私が言ったことが、嫌?」

「ううん……」

ベラは首を横に振って、目尻の涙を拭いた。


「リアの言葉を聞いて、すごく嬉しいから……私の気のせいかどうかわからないけど、小さい頃からずっと一緒なのに、私はよくリアを怒らせるような気がした。今日リアが実は私を嫌っていないことを分かって、本当に嬉しいよ」


「嫌いわけないでしょう、ベラはこんなに優しい子なのに、大好きに決まってる!」

私はため息をつき、ハンカチを取り出してベラの顔を優しくぬぐう。


「実は私、一つ君に告白することがあるよ」

私の言葉を聞くと、ベラは怪訝そうな顔で私を見ている。


そして、私はポケットからクリスタルリングを取り出し、ベラの手に置いた。


「ベラ、ごめんね。あなたが落としたリングは私が拾っただの。でもずっとあなたに返さなかった……今日はもう少しで売るところだったが、私は持って帰ってきた。あなたを傷つけることはできないから……ベラ、ホントにごめんなさい、私を許して」


──持ってくのは私じゃないけど。

──売ったのも私じゃない。

でも、過去のリアの身元を受け継ぐと同時に、彼女の過ちを一緒に引き受けるしかない。

私は心の中でそっとため息をついた。


しばらくの間、ベラは驚いていた。しかしすぐに、彼女はショックの中から気を取り直し、私の手を握る。


「大丈夫よリア、気にしないで。私は怒ってないよ。小さい頃から一緒にいるから、あなたは当然、

クリスタルリングが両親が残してくれた唯一の形見かもしれないことを知っているんだ。それをなくせずに済むよかった。拾ってくれてありがとう」


ベラの表情はとても真摯で、碧い目は世界で一番美しいエメラルドのようだ。

──さすが主人公、なんて優しい子だ!


ほんとに、私さえ見惚れてしまいそうになる

私は心の底から肝心しながら、ベラの手を握り返す。


「私こそ、ベラは私が嫌いにならなくて嬉しいよ」


「もう一つ、リアに聞きたいことがあるんだけと……怒らないでね」

「ベラに怒るわけがないでしょう。どうぞ言ってください。ちゃんと聞いてあげてから」

「さっきリアが、どんな人に出会ってからも、私のことが一番好きって、ホント?」

頬を赤く染め、恥ずかしいそうに、ベラは尋ねた。


「当たり前のことよ!私ベラが大好き、いまも、将来も!」

さっぱりと、私は答えた。

そして、ベラの口元は微笑みを綻ばせて、目を輝かせた。

「ありがとう、リア」


ベラの質問が、将来でいったい何を意味するのか、今の私には何も知らない。

ただ、最初の嵐は無事に過ぎ去り、やっと安心感を覚えた。

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~薔薇の王座~乙女ゲームの悪役魔女に転生した件 @hoshizorahare

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