悪魔のようなイグニス兄弟③~

……意識がどんどん遠ざかっていく……目覚めた後、やはり画面が変わり、選択する時に戻った。


「ふーん……大変だった。ヴィックは君の命を狙うつもりはないと思うが、多分君を試してみたかったんだろうな……でも、君がもし本当に殺されたら、生命を再構築することはとても複雑だから、今後は慎重に選択するほうがいい。やっぱりヴィックは強いな」

自分が生きていることに気づき、やっとほっとする時、ソルの話を聞いて再び口元がひきつる。


「あんた、神様じゃないの?大魔導士一人にも対処できないわけないでしょ」

「色々あるんだよ、神様だって」

「色々って何よ!」

「色々は色々だよ。今の僕にはもう一回あなたを救う力がないから、今度は慎重に選んでね」

「分かったわよ…」

私は自分を抱きしめ、悲惨な運命にため息をついた。

妥協するしかないよな……

震えてる指先で、選択肢画面でBを押しました。


【B. おとなしく説明する】


シーンが再びスタートし、ニコの手には火の玉がまばゆい光を放っている。

「嘘をつくのはよくないよ……」

「人を脅すのも、よくないじゃない……」

私は弱々しく抵抗する。


「あの条件では、自分の命を賭けることと同等だ。君は必勝法がないなら、あんな勝負しないだろう」

ニコは容赦なく噛みつく。


「どうして?私にせよカールにせよ、表と裏のどちらを出す可能性がある。両方にとっては点数を得る確率が同じから、ゲームはかなり公平だよ。私はイカサマをする機会が何処にもない。勝つのは運がいいだけよ」

一応、否定し続ける。


──太陽の神よ、お願い、この兄弟を私から遠ざけてください!

本当に火刑の結末を迎えたくないから!


しかし太陽神は私の祈りを聞こえていないみたい、現れてから何も言わずにいたヴィックが今口を開いた。

「このゲームは、ただ見た目は公平だけ、実は一定の確率で片面を操作すれば必ず勝つ」

まるで全身が凍っているようで、寒気が私の後ろから昇る。


──あいつは知っている!このゲームの仕組みを見破った!


さすがに天才大魔導士の目には何のトリックも隠すことは不可能、と私はため息をついた。

やはり選択肢通り、素直に説明しよ。


「この金貨ゲームに勝つコツは、単なる高校数学にすぎない」

「高校数学?それは聞いたことがない言葉だね。魔法学院には『高校』という設置はあるだっけ?」

「いいから、知りたいだろう。ちゃんと聞いて、説明するから」

ニコをにらみつけて深呼吸し、私は解説を始める。


この金貨ゲームの本質は、期待値に関する数学の問題である。


カールが表を出す確率が「x」、裏を出す確率が「1-x」にして、同じく私が表と裏を出す確率は「y」と「1-y」に設定する。そして、三つの場合の得点をそれぞれ計算することができる。


1.二人とも正で、確率は【xy】、得点を乗じて【3 xy】となる。

2.二人とも逆で、確率は【(1-x)(1-y)(1-y)】で、得点を乗じて【(1-x)(1-y)】となる。

3.片面が正反対の場合、同じく計算して【2 x(1-y)と2 y(1-x)】となる。


最後に加算すると、カールが得点の期待値の式【E=8 xy-3 x-3 y+1】が得られる──【x】と【y】は両方とも表の片面の確率を表すため、0から1までの数値のみになる。


この場合、Eが0未満に設定されている限り、カールの得点は負となって、最後の算数結果は【yが5分の1より3分の1未満】である。


私がこの確率で表を出すと、【x】がどんな数値であっても、最後の期待値は必ずマイナスだ。

──つまり、カールの策略がどうであれ、どのように片面を出しても、私は負けることはない。


「言ったでしょ、これは簡単な高校数学に過ぎない。私がこの確率で表を出せば、必ず勝てるよ」



解説が終わった後、二人の兄弟は沈黙に陥り、長い間返事がないので、私はますます不安になった。


「あっははははは。君はやっぱりおもしろい」

突然ニコが気持よく大笑い出したので、びっくりした。


「お兄ちゃん、リアは私が見つけたんだから、絶対に奪わないでね」

何?

何なんの?

小悪魔の意味深いの言葉に、私は嫌な予感から胸騒ぎがし、戦慄し始めた。


ヴィックは弟を淡々と一瞥をする。

「それはお前が決めることではない。この子に潜める力は、我が家にとってとても重要だ」

「ままあ、そんな堅苦しいこと言わないで、先ずはリアと仲よくしよ」


また怖いことを言いながら、私が反応する前にニコの天使のような顔が、一瞬で私の目の前に現れる。


──移動魔法か!

驚いた、私は思わず一歩下がった。


「まもなく、また会えるよ、リア」

ニコが予言のような言葉を落とした後、二人の姿が、現れた時と同じくらい突然に、裏路地に消えた。



私は、姿勢を維持して動かず、しばらく硬直になった。

二人がたぶん完全に離れたのではないかと確定してから、やっと少し体をリラックスさせる。


──ふう、びっくりさせないでよ、ほんとに。


いったいどうして私、この馬鹿ゲーに拉致されたのよ。

まだ元の世界に帰れるかな……

気分が落ち込んだときに、突然もっと緊急な問題を発見した。


「ここは、どこだよ!!!!!?」


絶望的な叫び声が、裏路地に長く響き渡った。

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