悪魔のようなイグニス兄弟②~

目の前に立ちはだかているイグニス兄弟に、私は思わずため息をついた。



そう。この乙女ゲーム「薔薇の王座」には、合計5人の攻略対象がいる。まだ登場していない隠れキャラクターを含めば、全部で攻略対象六人の可能性が高いけど──そしてイグニス兄弟は、その中の二人だ。


イグニス家は、ロマンシア大陸全体で最も有名で最古の魔法家であり、常に魔法の天才が現れたり、王宮の最高決議機関である元老院にも重要な席もいつも占めている。

金髪の兄、ヴィクトル・イグニスは、天才の中の天才で、15歳の時にすでに大魔導士になった。

大魔導士は、この世界の頂点に相当するような存在だ。

无事に魔法学院を卒業してから魔術士になり、それから魔法ギルドの試練を通じれば魔導士と認められる。

そして大魔導士の実力は、一般の魔導士を圧倒する存在だ。


今大陸全体には、大魔導士がただ5人。

暗黒神に身を投じた噂の「黒の魔導士」を除けば、4人しかいない。

ヴィクトル・イグニスは、生まれてから尋常ではない魔法の実力を持ち、今は大陸で最も若い大魔導士でもある。



イグニス家の未来の家主として、ヴィクトルは老成してクールな性格だ。


茶髪の弟はニコラス・イグニス、兄の程ではないが同じく高い魔法の天賦を持っている。他の人に「小悪魔」と呼ばれ、天使の外見とは裏腹に性格が腹黒で、自分の嫌いな人をからかうのが好きだ。

兄であれ弟であれ、性格は親しみやすいタイプじゃない。

そして今、この兄弟ふたりともは私を見つめている。



「あなた達は……誰?」

唾を飲み込んで、私は低い声で尋ねた。

私はすでに2人の正体を分かったが、決して認めることはない。特に兄のヴィクトル──この将来で私を火刑に送る男に!

彼に会った今、私は全身が恐怖に満ちている。


「僕の名前はニコラス、でもニコと呼んでいいよ」

ニコは自己紹介し、凍った表情の兄を指す。

「こいつは僕の兄のヴィクトルで、ヴィックと呼べばいい」


──さっぱりだね。イグニスの姓は明かさなかったが、率直に本名を教えてくれた。

私は彼らの誠実に呆然とする。


ニコはだらだらと窓際に背をもたれ、私をじっと見つめ、口を開いた。

「君は、リアと呼んだっけ?」


彼らの意図がまったく分からないが、私は慎重にうなずいた。

「そう、ですけど」


「じゃあリア、僕はさっきのゲームに非常に興味があるんだ。どうして自分が勝つと分かってるの?」

「まさか……ただ運がよかっただけよ」

私は馬鹿なふりをする。


「嘘をつくのはよくないよ……」

ニコは低く笑って、火の玉を手に凝縮し始めた。

「罰が当たるから」


なんだ!

何をする!

炎を見るとき、無意識のうちに火刑のCGを思い出し、怖過ぎて一歩後退した。

 

 

「はい!さっきのゲームは本当にエキサイティングだね!そして意外と攻略対象であるイグニス兄弟の登場が早まったみたい」

ソルが再び現れた。


命を救う藁をつかむように、私はすぐに頭の中で彼に尋ねた。

「どうしよう!元の流れでは彼らとカルサ城で出会うこともないし、どこかが間違ってるに違いない!」

「まさかこんなに早くもイグニス兄弟に会うなんで、僕が思ったより優秀だね、君は。ほんとにすごいよ」

「ふざけるな!」

私は思わず叫んだ。幸いにもソルと話していると、時間がゆっくりと流れている結界に入り、あの二人に気づかれずに済む。


「脱出を手伝ってくれる?私はこの兄弟が本当に怖いよ!」

「どうして?せっかく攻略対象に出会ったのに、そんなチャンスを逃すわけにはいかないだろう……よし、ご褒美として、特別な選択肢を追加しよ!」

「特別な選択肢!?ふざけるなーー」


絶望的に、私の抗議する声にも関わらず、目の前に見慣れた選択肢画面が浮かび上がった。

テキストは、ゆっくりと現れる。


A.すぐ逃げる

B.おとなしく説明する

C.冷笑して2人に挑戦する


……


どうして!!!!!!

どうして毎回変な選択肢が出てくるんだよ!


「プレイヤーへのご注意──対戦相手の強さのため、今回の選択肢は慎重に選ばなければならない。失敗すると、死に至る可能性もあるんですから」

「余計のご注意だ!!!」

向こうのやつの手によって火刑台に押し付けられる画面が今でも頭の中に深く刻まれていて、私は気が狂いそうになる。


「あんたは助けてくれるんじゃないの?なんでいつも私をからかうんだ!」

「僕は本気で助けてるのに、ほら見て、正しい選択肢が分かりやすいんじゃない?」

「うそ!あんた実は私が火刑に処される画面を見たいだろ?」

「まさか、そうなら君を異世界から引き寄せる苦労もしないでしょう。ちょっと悪戯をしてみたいだけ……あ、つい本音言ちゃった──」

「冗談じゃないよ!!!!」


 

10分後。

目の前にある3つの選択肢を見てて、押す勇気が依然にない。

どちらも選びたくない!


「もし、私が……選択しないと、どうなる?」

慎重に尋ねる。

「まあ……タイムリープを設定したんだから、選択しないとこのシーンに永遠に閉じ込められるんだよ」

「タイムリープって何?」

私は警戒して耳を立てた。


「ほら、君の世界のゲームではそうじゃない?選択の画面でセーブしたら、失敗しても一度戻って選択し直すことができるんだ。僕はそのプロセスを模倣し、選択肢にタイムリープを設置したんだよ!すごいとは思わない!この世界に時空魔法できるのは僕だけだよ、神様だから」


「わかった!つまり選択し直す機会があるってことだよね!」

ソルのまだ続くナルシストな言葉を無視して、私は目を輝かせ、すぐにAを選んだ。


【A.すぐ逃げる】


 

Cを選ぶのは不可能、私は自分一人で大魔導士を倒す能力はないだから。

全力を尽くし、逃げるしかない!

ゲームの結界がなくなった瞬間、私はまっすぐヴィックの横の隙間に向かって走る。


路地の反対側は行き止まりで、唯一の出口はこの方向だ!

その刹那──

金髪の少年は、私をちらっと見て指をパチンと鳴らした。

一瞬に、私は自分の体が炎に包まれているのを驚愕して見る。


「言ったでしょ、罰が当たるって」

激痛が伝わってきたとき、ニコの低い声が後ろから聞こえてきた。

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