悪魔のようなイグニス兄弟①~

「どうする、このゲームしようか?」

不敵に笑いながら、私はそう尋ねたが、カールは必ず応戦することを心の中で既に分かっている。


リアの記憶によると、カールは極度にけちな人で、少しの利益も見逃すことはない。このゲームの見た目は公平で、賭物は彼にとって非常に有利だ。もし私が勝ったら、リングを取り戻すだけ──その逆、彼が勝った場合、五枚の金貨を取り戻すことに加え、私の人身制御権も得るんだ。

やはり、今のカールはわいせつな目で私を見つめている。


「本当に、好きにしていいかな、どうでも?」

「もちろん」

彼の気持ち悪い目つきを我慢し、私はさっぱり答えた。

「ホーマン、どう思う?」

酒場での会計をする店員、ホーマンはうなずいた。

「確率的に見ると、両方も表の場合は4分の1、同じく裏も4分の1で、片面が正反対だったら2分の1──ていうことは、両方の得点の確率は同じだ」


「まあ、あなたが負けることが怖いなら、断ってもいいよ別に」

最後に、私は火を点けた。

この明らかな挑発に、やはりカールの顔色はすぐに青くなった。


「やろうぜ──太陽神に誓ってッ!」

「じゃ私も、太陽神に誓って」

私もカールの動きに従って、指を3本持ち上げた。


太陽神はこの世界の支配神だから、その名のもとに宣誓することが最高の誓いであり、もし誓いに背くと神への冒瀆と見なされ、太陽神を信仰するロマンシア大陸では簡単に見逃せられない。


「ふふ、負けたら絶対泣かないぜ」

自分の勝利を確信し、その後の目当てのものを思い、カールは下卑た笑みを浮かべる。


──あんたこそ、負けたら泣かないよ。

私は、依然淡々とした表情とは裏腹に、心の中ではもう微笑みを浮かべ始めた。


実はカールよりも、二階から投げてくるフードの二人の視線が私をもっと圧迫された気分になる。

ゲームの対決を提案してから、彼らは完全に私に目を留めているよう──やはり気のせいか?


ようやく、ゲームが正式に開始され、誰も視線を離さずゲームの進行に注目している。

一局一局が進むにつれ、カールの笑いはだんだんと消えていき、やがて極寒になった。


最後に100局が終わり、観客全員が目を大きく開いた。


「118:83、優勝者は......リ、リアだ」

得点をカウントする役割を担ったホーマンは、震えながらも結果を発表した。


「ふざけるな!イカサマだ!お前イカサマしてるんだ!」

カールはすぐに立ち上がって、私に絶叫する。


「え~失礼ですが……イカさまの証拠は?」

私は、再び無敵に微笑んだ。

「こんなにたくさんの目で見つめられてると、イカさまを出す余地はないでしょう?ここに、私が不正をするのを見た方は?」

私の目はぐるりと、酒場を一回りしたが、誰も声を出さなかった。


「それとも、誓いを破りたいかしら、太陽神の名のもとに宣誓したのに?」

「そ、それは……」

カールはぐずぐずし始め、結果何でも言えなかった。

さすがカールでさえ、人前で太陽神の誓いに背く勇気がないようだ。


「じゃ、リングを頂くわ」

空に浮かんでいるクリスタルリングを、手に取り寄せる。

「ちなみに、金貨5枚ありがとうございました❤」

カールに向かって一礼をした後、振り向かずに去った。


薄々と、回りからざわめく議論の音が聞こえてくる。


「あんな条件だと、あの子の貞操どころか、自分の命まで賭けたんだな」

「自分が勝つと確信したのか?いったい何者?」

「お前はよそ者だから知らんとは仕方がない。彼女は郊外のマリア修道院の孤児リアだ」

「孤児なのかよ、若いのにこんな対応ができるなんて不思議だな……」



酒場を出て、中央通りに曲がってから、私はやっと安堵の息をついた。

手に持っているのクリスタルリングを注意深く観察し、以前と同じように無傷であることを確認した後、慎重に服のポケットに隠しておいた。

──よかった……これでベラに返せる。


そう思っていると、体が突然障壁の層を通り抜けたよう、もともと人ごみの多い中央通りから人けのない路地に変わった。


「空間魔法!」

私はすぐにそれを見破って、警戒しつつ周りを見回す。

「誰だ!?」

私が質問する瞬間、後ろからかすかな笑い声が伝わる。


びっくりして、急に振り返ると、フードを着てる二人を見つけた。背の高いほうは路地の出口に立っていて、明らかに私の逃げ道を塞ぐため。

もう一人は、建物の窓枠の上にだるく座り、私を見据えている。

さっきの酒場の二階にいる二人だ!


だが今では、彼らはすでにフードを引っ張った。

陽だまりの下で、非常に整った二人の顔立ちが目に映る。


立っている男の子は年上のようで、17歳か18歳くらいかな、金髪がきちんと顔にくっついていて、クールな表情をしてる。

もう一人の少年は、自分と同い年、15歳ぐらいの様子で、薄い茶色の髪がかすかに乱れ、額に数本の髪の毛が垂れ下がっている。

二人とも綺麗な蒼色の瞳で、頬の輪郭線は藝術像のように美しく、フッドの下に繁雑で高級感ある服がかすかに現れ、彼らの貴族であることを代弁する。


私は、すぐに血の気が失せた。


この二人は、ゲームの攻略対象であるイグニス家の兄弟──ヴィクトル・イグニスとニコラス・イグニスじゃない!!!!!!!?


「さっきのゲーム、一つ聞きたいことがあるんだけど」

声を上げたのは弟だ。

天使のような顔は、親切だが、恐ろしいとも見える微笑みで私を見つめている。


「どうして君は、自分が必ず勝つことを確信できるの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る