女子高生の会話、押し勝つ編

山口遊子

第1話 押し勝つ

[まえがき]

書いているうちに話がグダグダに。どこまで書いても話が繋がらない。

◇◇◇◇◇◇◇


 あたしの名前は、堀口明日香。県立○○女子高校に通う高校1年生テニス部員。毎日の朝練、放課後の部活と、テニスが上手いわけじゃないけど、テニスに青春を懸けている。



「フォーティー、ラブ!」


「フォーティー、フィフティーン!」


「ゲームセット、セットカウント6-3、静香」


 今日も部活の仕上げに中学からの同級生の鶴井静香と1セットマッチを戦い、また負けてしまった。



 本来1年生は、部活中は素振りや球拾いで、コートに入って練習試合などできないらしい。先輩部員によると、今年の新入部員が、あたしと静香の二人しかいなかったので、特別待遇なのだそうだ。


「お疲れ様でしたー!」「お疲れ様でしたー!」


 部活が終わり、みんなで元気に挨拶。


 新人のあたしたち二人は後片付け。さすがに、そこは特別待遇はないらしい。コートの周りに転がったテニスボールを集め終わり、ネットのワイヤーを緩めながら、コートブラシを引っ張ってコートを均している静香に話しかける。


「ねえー、静香」


「なに、明日香?」


「もうすぐ期末だけど勉強してる?」


「まだ、全然。部活の後、家に帰ってご飯食べてお風呂に入ったらすぐ寝てる。宿題だけよ。何とかやってるのは」


「あたしも全然。静香の話聞いて安心した」


「わたしを見習っちゃだめだよ。アハハハ」「アハハハ」


 箸が転んでも嬉しい年ごろである。




「後片付けにずいぶん時間かかっちゃったね!」


「二人だときついね」


「それでもボールも打たせててもらえてるし、贅沢言えないよ。シャワー浴びて早く帰ろ」




「ねえー、静香」


「なに、明日香?」


「どうしてシャワールームの個室のドアの下の方が開いてると思う?」


「さあ、どうしてだろ」


「あたし思うんだけどね。これって、……だからじゃない?」


「ごめん、明日香、シャワーの音で聞こえなかった。どうしてなの?」


「静香のシャワーの音に合わせてほんとは喋ってないの。あたしもなんでかわかんなーい」


「明日香ひどーい。アハハハ」「アハハハ」


 箸が転んでも嬉しい年ごろである。



「そろそろ出よっか」「うん」


 ……


「ねえー、静香」


「なに、明日香?」


「帰りに途中のコンビニに寄って飲み物買ってかない? あたし今はまってるジュースがあるの」


「へー、どんなジュース?」


「ええとね、『おしるこ風味のレモンジュース・スッキリ!』て名前なの」


「なにそれー、そんなのあるんだー」


「冗談。そんなのあるわけないよー。アハハハ」「アハハハ」


 箸が転んでも嬉しい年ごろである。


「そろそろ帰ろ」「うん」



 シャワーを終えて着替え終わった二人は、教室に戻り、荷物を持って校門を出たところである。


「ねえ、静香、何かお勧めのアニメってある?」


「うん? 明日香、アニメのお勧めって、試験勉強はいいの?」


「あっ! すっかり忘れてた。それはそれ、これはこれ」


「そうねー、やっぱりサザ〇さんでしょ」


「静香、それホントに真面目に答えてくれてる?」


真面目まじめだよ。大真面目おおまじめだよ」


「どこがお勧めなの? って真面目に聞いても仕方なかった」


「ねえ、自分から聞いてきたんだからちゃんと人の話も聞いてよね」


「じゃあ話してみてよ」


「あの家族の距離感が堪らないのよ」


「どうして?」


「今どき、あんなに大勢で一緒に食事できるうちってないでしょ? あれが良いの」


「そうなんだ。そう言えば静香は一人っ子だし、ご両親は共稼ぎだもんね」


「明日香はあの中で誰を推してるの?」


すって程じゃないけどアナゴ君かな。あの唇が堪らないのよ」


「うそでしょ?」


「うそだよーーん!。静香は誰かいるの?」


「そうねー。波平さんかな?」


「うそでしょ?」


「うそだよーーん! アハハハ」


「アハハハ」


 箸が転んでも嬉しい年ごろである。


「ねえ静香、アニメは置いといて、誰かしっている?」


「アイドルでいるよ。でも明日香には教えない。あと明日香、あなた『おし』っていってるけど『押す』じゃなくて『推す』だから」


「? だから『押し』でしょ? 押したり引いたりの『押す』じゃないの?」


「そっちじゃなくて推薦の『推す』なの」


「分かんないけど、まあいいや。それで何で教えてくれないのよ? 教えてくれたっていいじゃない」


「じゃあ、ヒント出すから当ててみてよ」


「分かった」


「ヒントその1。女性です」


「それだけでわかったら異常だよ」


「ヒントその2。高校2年生です」


「なに? うーん、アイドルの歳なんて全然知らないからなー」


「ヒントその3。うちの高校生です」


「うちの高校にアイドルなんていたっけ?」


「本人が隠してるし、学校じゃ眼鏡かけてて目だたないから誰も知らないと思うよ」


「ここ東京に近いと言っても大変なんじゃない?」


「スケジュール管理は大変みたいよ」


「誰? 誰なの?」


「教えなーい。誰にも教えないって約束してるんだもの」


「静香ずるーい。あたしと静香の間に隠し事なんて今までなかったと思ってたのにー。

 で? ほんとのところ誰なの?」


「こればかりは、明日香にも言えないってば」


「ふーん。そうなんだ。じゃああたしも静香に良いこと教えないもんね」


「何よ。ホントはいいことなんて何もないくせに」


「そう思うのは静香の勝手だもんねー。フフフのフーンだ。

 あれ? いま閃いたんだけど、

 静香だけ知ってるってことは、その人、静香とよほど親しい人ってことよね」


「ドキッ!」


「まさか、その人、えーと名まえは忘れちゃったけど、静香の従姉の人じゃない?」


「明日香、誰にも言っちゃダメなんだからね」


「もちろん誰にも言わないけど、その人の芸名ってなんていうの?」


「月島紗耶香さやか(注1)」


「エッ! エーー! ほんとのアイドルじゃない」


「ビックリした?」


「ビックリした」


「うそだよーーん!」


「エッ! 今までのアイドルの話って全部うそ?」


「そ」


「静香ひどーい。ホントに騙された。でもホントだったら面白かっただろうね」


「そうね」


「身近にいるアイドルの応援団っていいかもって思ってたのになー。なんかそんなことするのも青春って感じしない?」


「どうかな。だってアイドルの応援団ってオタクっぽい人が多いイメージがあるんだよね」


「『しのためなら死ねる!』って言ってそう。アイドルのためならCD山のように買ったりね」


「そういうのって『推し活』っていうらしいよ」


「そうなんだ。初めて聞いた。『押し勝つ』にすると、相撲の『押し出し』みたいだね」


「明日香、相撲好きよね。うちの学校に相撲部あったら入ってた?」


「何言ってるのよ、入るわけないじゃない。あたしはテニスに青春を懸けてるの」


「テニス部なくて相撲部があったら?」


「ちょっとは考えるかも? って、んなわけないでしょ!」




「ねえねえ、静香。そこのコンビニに寄って何か飲みもの買ってかない?」


「おしるこ風味買うの?」


「あれは冗談だっていったじゃない」


「うちに帰ったらすぐ夕食だし、やっぱりいいわ」


「じゃあしかたない。あたしだけ買ってくるから、静香はここで待っててよ。おしるこ風味ホントにあるかもよ」


「何言ってるのよ。わたしも行くわよ。明日香、待ってよ。待ってってば……」






注1:月島紗耶香

ご存じ、賢者サヤカ。名まえを考えるのが面倒で『真・巻き込まれ召喚~』から拾ってきました。

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女子高生の会話、押し勝つ編 山口遊子 @wahaha7

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