推しがいて何が悪い。

宵宮蝶咲

第1話 想い。

「私には推しがいます!」

その一言でさっきまでの真面目ガールの雰囲気は一瞬で消え去った。ざわめく教室。あちゃ~…これ…やっちゃったな…なんて思いながら愛想笑いで「一年間よろしくお願いします!」と締めくくる。言わない方がよかったのかな…おそらく、「推しがいる女の子」と聞くと、多くの人が想像するのは2パターンあると思う。

一つは、いわゆる「リアコ」。推しを恋愛対象として見ている人。界隈を荒らしている面倒な人達だと思われがちだけれど、やっぱり底の底にあるのが「推しへの愛」っていうのはリアコもそうじゃない人も同じだと思う。

もう一つは、「腐女子」とか「夢女」とか呼ばれる部類かな。妄想激しい人、ってイメージが強いみたいで、推しがいない人は引くらしいけど、腐女子どうし、リアコどうしは分かり合ってる気がする。

でもこれは、あくまで女子が二次元だろうと三次元だろうと男子を推してる場合にすぎない。だから、私とはまるで違う。

私の推しは…「二次元でもあり三次元でもあるの女の子」。

詳しく言うと、二次元のアニメキャラの声優が三次元でもライブをする、そのコンテンツのあるキャラを推している。

私の思想はちょっと(いや、かなり?)変わっている。

まず、「可愛い」が最上位の褒め言葉で、可愛いものなら何でも好き(実際私の推しも他のキャラより群を抜いて可愛い)だ。

そして、推しは崇高な人であり、簡単に宝物だの特別だの言っていいような人ではなく、一般人である自分とはかけ離れた存在だと思っている。

私が今の推しを推し始めたのは一年前くらいだったと思う。受験に失敗し、第一志望校に行けず親から見捨てられた私をたった一人、見捨てなかった人。そのキャラの境遇があまりにも私と似ていて、あなたが勇気を出して一歩ずつでも前に進んでいるから、私ももっと頑張れる。これが俗に言う、「生きがい」。私にとって初めての推しが、あなたでよかった。

グッズもたくさん買った。有名なコンビニとコラボした時は何件もコンビニをはしごして対象店舗見つけて、限定の店内放送もしっかり録音して、何回もそれを聞いた。ライブも行きたかった。でも親は厳しくて、行かせてもらえなかったから映像で我慢した。もちろんゲームも毎日欠かさずログインしてるし、アニメや映画も全部見た。あなたの可愛さにいつも救われているんだよ。

でも、後を絶たない転売ヤーとか、アンチは心が痛む。一番つらかったのは、身近な人に推しを否定されたことだと思う。同じクラスのA君には推しがいないらしい。だからA君は推しがいる人の気持ちがわからなかったみたいで、推しがいる人も入っているクラスラインでこんなことを言い出した。

「気持ちのコントロールができない人は自ら命を断ってしまう。死んだら推しとか関係ない。遺された人の後悔や命の重さを考えろ。」

正直、かなり傷ついた。A君は最近、周りの人が自ら命を断ってしまったらしい。ただ、い

言わせてもらおう。「お前の言ってることは間違っている。」

気持ちのコントロールできない人はみんな死ぬ、そんなこと考えてる人に、命の重さを考えろなんて言う資格はない。

私は死にたかった。でも、期待という名の圧で死ねなかった。「あなたならできる」という言葉で幻覚だけ見せられて、できなかったら「切り替えて」で取り繕う。そんな大人に踊らされていた。A君は簡単に言うと陽キャ。多少羽目を外しても許された。でも、私は違う。ちょっとでもレールをはみ出すと怒られる。

そんな私を救った、推し。推しのおかげで初めて、「期待に応えるためじゃなくて、自分のために生きよう」、そう思えた。あなたの「推しなんて」というたった一言で、推しを生きがいにしている人は傷ついた。だから、A君は嫌いになった。

推しは私にとって、生きがい。その一言に尽きる。あなたがいたから、私がいた。あなたがいたから、同担の友達もできた。あなたがいたから私は今生きている。

そんなあなたに感謝を伝えるために、今日も推し活に励みます!


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推しがいて何が悪い。 宵宮蝶咲 @Alice_Kurumi

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