異世界転性した俺は、絶賛売れっ子アイドル
やしゃじん
推し活。ガチ恋。闇。
争いを終わらすためになにも戦う必要はなかったんだ。
大きなステージに立つ俺を囲う民衆。
その中には国王や魔王を初め亜人や魔族、人間など階級や人種に囚われず一人の観客として俺を見ている者達がいる。
この世界では珍しい黒色の長髪を靡かせて歌って踊るのは、前世で高校を中退して引き籠り、一切働かず気が付いたら死んでいた
しかし、今の俺は全種族から推される超絶美少女アイリス。
異世界に転生したと思ったら性別が変わっていて、何故かアイドルになっていた。
「みんなー! 今日もアイリスのライブに来てくれてありがとー! またねー」
今日も今日とてライブは最高の出来で終わりを迎えた。
会場を後にした俺は何度味わっても慣れない高揚感を胸に抱き静かに天井を眺める。
ーー元男がアイドルなんて。
そんな考えはとうの昔に無くなった。前世で孤独だった俺は皆にちやほやされるこの今を大切にしていきたい。
一人静かな部屋で感慨に耽っていると、視界がいきなり暗転した。
「だ~れだ」
後ろから聞こえた甘ったるい声に俺は肩がぶるっと震えた。
「り、リリ......」
「せいかぁい。今回はちゃんと覚えててくれたんだね。リリ嬉しいなぁ」
あははっ、と何処か狂気じみた声色で彼女は笑う。
目を覆う彼女の手はとても冷たい。視界を遮られ少し研ぎ澄まされた耳にポツポツと何かの音が届く。それからツンとした匂いが微かに漂っていた。
体の震えが止まらない。
後ろの彼女が今日は何を持ってきたのかが、怖いから。
俺は勇気を振り絞って彼女に声を掛けた。
「今日は、どうしたの......?」
「今日もね、プレゼントを持ってきたの」
「な、中身は?」
「やだなぁ、中身を聞いたらプレゼントの意味ないじゃん。ほら目の前に置いてあるから開けてみてよ」
そういって、彼女は俺の目から手を離す。
視界が開くと机の上に赤色の紐で結ばれた綺麗な小包があった。
想像していたものと違い呆気に取られていると、早く開けてと催促される。
さっき聞こえた音や匂いは間違いだったのだろうか。
紐を解き、中身を空けるとそこには色とりどりの菓子が詰められていた。
「こ、これは......」
「リリがアイリスちゃんのために作ってきたの! 愛情たっぷりだからお家で食べて」
「ありがーー」
お礼をしようと俺は彼女に振り返って、見てしまった
「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
「......」
どうしたもこうしたも無かった。
彼女の顔には絵の具を派手にぶちまけたのかと、思えるほどに赤い何かが付いていて、さっき感じた異臭も僅かに臭う。
「......その手に持ってるものって?」
「あ、これ? さっきこの部屋に侵入しようとしていた悪い人がいたからリリが懲らしめてあげたの。ねぇ、リリってとってもいい子でしょ?」
彼女が掴んでいるのは人の......。
そこまで考えたところで俺は胃の中のモノを外にぶちまけていた。
「あぁもう、きたないなぁ」
彼女の手が俺の背中をそっと摩る。
だけど、どうしてこうも落ち着かないのか。その意味を俺はすぐに知った。
「......だけど、綺麗だなぁ」
俺は彼女の放つ言葉が分からない。
「ねぇもっとあなたの汚い姿を見せて」
「もっとリリを興奮させて」
「もっとリリを貴方に夢中にさせて」
「ねぇーー
ーー貴方から流れる血はどれだけリリを興奮させてくれるの?」
異世界転性した俺は、絶賛売れっ子アイドル やしゃじん @syuumatudaidai92
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