孫とおばあちゃんと推し活 KAC20222
天雪桃那花(あまゆきもなか)
おばあちゃんに元気を取り戻せ
あたしのおばあちゃんは95歳。
めっちゃ元気だった。
105歳でおじいちゃんが大往生するまでは。
おばあちゃんとおじいちゃんは、一緒に散歩や旅行に出掛けたり、映画に行ったり、ジムで鍛えたりと仲良く暮らしていた。
孫のあたしの自慢の仲良し夫婦っぷりだったんだ。
おじいちゃんが死んじゃってからはすっかり塞ぎ込んじゃって、あまり出掛けてないみたいだ。
おじいちゃんが死んじゃって、すっかり覇気の無くなったおばあちゃん。
なんとか元気づけたくて。
おばあちゃんは一人暮らしで、心配したママがうちに来るように説得したんだけど。
ずっとおじいちゃんラブラブだったおばあちゃんは、おじいちゃんと暮らした思い出いっぱいの家からは離れたがらない。
おばあちゃん家はうちと同じ県内だから、あたしやママはちょくちょく遊びに来たり、おかずを作って持って行って御飯を一緒に食べたりと様子を見に来てる。
今年の春から大学生になるあたしはおばあちゃん家に下宿することにした。
大学にはおばあちゃん家から行く方が近いからというのは表向きのことで、実は大好きなおばあちゃんが独りなのが心配だったから。
おばあちゃんの子であるママはあたしの提案に申し訳無さそうな顔をしつつも、一瞬ホッとした表情をして嬉しそうだった。
パパはおばあちゃんをどうにか説得してうちに呼ぶことを諦めていないみたいだ。でも、あたしの決意は固い。
ある日、下宿を始めたおばあちゃん家に帰る途中の商店街で、おばあちゃんの幼馴染みのノン子ちゃんと会った。
ノン子ちゃんも御年95歳だ。おばあちゃんと同い年。
塞ぎ込んだおばあちゃんを心配してくれてる。
ノン子ちゃんも実は数年前に旦那さんを亡くしていて。でも元気そうだ。
「アタシが元気なのは推しのおかげだよ」
「推しのおかげ?」
「アタシには宝○歌劇団のリョウ様や韓国アイドルグループとか、尊い男役様や好きな推しメンがいるからねえ。コンサートとか行ったり、忙しいよ。珠緒ちゃんもなんか好きなことや好きな芸能人が出来ると良いと思うんだよねえ。何度かアタシが誘っても珠緒ちゃんは行きたがらないもんだから」
「おばあちゃんも好きなアイドルが出来たら、ノン子ちゃんみたいに元気になるかな?」
「そりゃきっとなるさ。推し活ってそれだけの力があるもんだよ」
「ありがとう。あたし、おばあちゃんのために頑張ってみるよ」
ノン子ちゃんに教えてもらったのは、宝○歌劇団、韓国アイドル、日本のアイドルグループなどなど。
あたし自身は推しメンもいないし、そんなには興味が無かったんだけどね。その日からおばあちゃんのためにと研究を始めた。
おばあちゃんにアイドルとかの動画を見せ、CDを買って聞かせてみた。
でも、一応は一緒にみてくれるんだけど、あんまりそんなに興味なさそう。
これは強引にでもコンサートに一緒に行くべきかなと思っていた時。
「まあ、可愛らしい。あたしもこんな風になりたかったねぇ」
「えっ? だれだれ? 誰を見てるの?」
「この子たち、一生懸命で可愛いじゃないの。あたしもこんな風に踊ったり歌ったりしてみたかったねえ」
あたしがテレビを見てみると、そこにはかっこよく踊りながら歌う女性アイドルグループがいた。
こ、これは!
おばあちゃんが初めて興味を示したアイドルだ。
あたしはコンサートに行こうかと誘ってみる。
「この人たちのコンサートにでも行ってみる?」
「行こうかねえ」
「行こう、行こう」
あたしとおばあちゃんは、一緒にコンサートに行ってみた。
コンサート会場の熱気、可愛い衣装を身につけたアイドルグループ。
ファンは老若男女いて、大盛り上がり。
彼女たちの踊りと歌、キュートで時折り凛とかっこいい雰囲気にすっかり夢中になっていた。
今では推し活のおかげで、おばあちゃんはすっかり元気になった。
あたしとおばあちゃんはアイドルグループの影響を受けて、ヒップホップダンスを一緒に習い始めた。
おばあちゃんと二人で、ヒップホップダンスを踊るための服も新幹線で上京して渋谷まで買いに行った。ついでに東京観光もあちこちしちゃった。
これで服装もバッチリだよ。うんっ!
楽しい事って元気が出るよね。
ニコニコと楽しそうに笑って、自分のペースで踊るおばあちゃんを見て、あたしは心が踊っていた。
おしまい♪
孫とおばあちゃんと推し活 KAC20222 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE
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