姉の推し活がうざすぎる。
山岡咲美
姉の推し活がうざすぎる。
「みんな今日はホントありがと、このバンドも結成一周年、みんなの支えもあって活動が出来てるんだって、今、感じてる」
ロックバンド[シスターイズアノイング]激推しギターヴォーカル、髪を金髪に染めあげた
押野弟太が青メッシュが耳の左前から下がるロングヘアー、速弾きベース女子、
「じゃ聴いてくれ、俺達[シスターイズアノイング]からの愛と感謝を込めて……」
観客
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「──────────────────」
「弟太ああああああああああああ!!!!」
「フウアイトオオオオオオオオオ!!!!」
「愛してるるるるるるるるるるる!!!!」
「お姉ちゃんだよおおおおおおお!!!!」
「見えてるるるるるるるるるるる!!!!」
「お姉ちゃん見てるよおおおおお!!!!」
「ここ、ここおおおおおおおおお!!!!」
「お姉ちゃんここだよおおおおお!!!!」
「ここで見てるよおおおおおおお!!!!」
「お姉ちゃんここで見てるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ライブハウスの最前列、他の観客を押し退けライブハウスのキャパの半分くらいの広い空間を作りだした明らかに痛い女、
「…………姉さん」
[シスターイズアノイング]激推しギターヴォーカル、押野弟太は崩れ落ちる。
「あんたいい加減にしなさいよ弟太くん困ってるでしょ!!」
速弾きベース女子、大手楓は押野弟太の姉、押野姉百音のライブハウスでのあまりの態度に壇上から押野姉百音を指差し突っかかる。
「何さあんた! 弟太の前のバンド解散したのいいことに弟太に近づいて! この寄生虫女!!」
押野姉百音は壇上に上がってバンドメンバーをボコると、押野弟太にとても怒られたのでもうしないが客席ギリから速弾きベース女子、大手楓で食ってかかる。
「そのバンド解散したのアンタのせいじゃない!!」
バンドメンバーボコり事件だ。
「弟太が歌ってるの邪魔するからよ!!」
姉は無実を主張!
「それコーラスよ! バカじゃないのアンタ!!」
敗訴確定!!
「弟太! この女クビにして! 悪い虫よ! 弟太だまされないで!!」
どこまでもな姉だ。
「弟太……さん」
アイコンタクツ!! 超絶ドラム少年、爆竹叩句が激推しギターヴォーカル、押野弟太に何とかしてと冷たい視線を送る。
「うう、確かに……」
押野弟太は不屈の精神で立ち上がる。
「姉さんいい加減にしてよ! これじゃライブ出来ないだろ!!」
押野弟太はカッコよくキッパリ言い切った!
「でも弟太」
姉、押野姉百音は不満顔だ。
「姉さんこれ以上邪魔するならもう一緒にご飯しないからね!!」
うん、あんまりカッコよくなかった。
「うう、わかったわ……」
押野姉百音(姉)は不満は抑えきれないほどあるが、押野弟太(弟)と一緒にご飯出来ないのは嫌だ!!
「ふんっ!」
速弾きベース女子、大手楓は勝ち誇る(何に?)。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……」
かわいい系美人、押野姉百音はライブハウスの床に這いつくばり、両手指のあいだペンライトを震えながら握りしめその目から血の涙を流した。
観客
「─────────────弟太くん♡」
「───────────────最高♡」
「─────────────かわいい♡」
「───────────────優勝♡」
「───────────ずっと推せる♡」
「──────────────勝てん♡」
「─────────ご飯しないからね♡」
「─────────────たまらん♡」
「────────────こっち見て♡」
「─────────────歌始まる♡」
「弟太──」
「では聴いて下さい、新曲」
タイトル
「姉の推し活がうざすぎる。」
ライブハウスは今日も盛り上がる、たとえ前のバンドが解散しても、ギターヴォーカルの姉がおかしな奴でも、ベース女子がその姉に嫌われていても。
押野弟太は揺るぎなく姉とファン達に推されているのだ。
姉の推し活がうざすぎる。 山岡咲美 @sakumi
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