推し活

影神

弁当屋さん



「んー、、」



手書きのメニュー表を見ながら、眉を寄せる。




「今日はどんな気分だろうか、、」




少し前に。



近日にお弁当屋さんがある事を知った。




世間がこうならなければ。



私が、その場所を知る事も無かったのだろう、、




そして。




私が彼女と出逢う事も、、




今日もメニューを考える。



推しに、会う為に。




毎日。家と、会社の往復。



スーパー等、とうに閉まっている時間。




唯一の明かりに、群がるかの様に。



私は。



コンビニへと足を運ぶ。




自炊が出来ない訳ではない。



そんな時間があるのならば。



私は睡眠へと時間を割り当てる。




上司や後輩。



いや。会社自体に、恵まれ。



業務に追われるだけの日々。




めんどくさい人間関係や。



他の事で悩まなくても済む環境。




パソコンと向き合い。



当り障り無く対話し。



きっちり、残業して。



終電で帰る。




「疲れた、、」



仕事は嫌いじゃ無い。



達成感もあれば、給料も良い。




プライベートを犯される事も無ければ。



邪魔すらされない。




「こんな御時世だからさ?




明日から、、



テレワークで。」



呼び出された上司に不安を抱えていたが。



その言葉に、心は踊った。




やっふぉーーーい!!




会社に行く時には、必ずスーツを着る。



スーツは正直、めんどくさい。



何よりも。ネクタイがうざったい。




他人からどう思われているのか。



なんてのは、知らないが。




私は。



結構な、めんどくさがりやなのだ。




ぐぅ、、、。



「腹減ったな、、」



時刻を見れば、17時を過ぎていた。




仕事の内容は変わらない。



「買い物でも。



行くか、、」




電車での移動時間。



支度をする時間。




それらが無い分。



他に時間を使える。




「、、自炊でもするか。」




こうして、時間を気にせずに。



外を歩く行為自体が。




果たして、、



いつぶりなのだろうか。




外の匂い。



人の声や。



生活の音。




まるで、異世界にでも来たかの様に。



私は住んでいる場所をゆっくりと歩いた。




いつも外から見るだけの場所。



暗く、明かりが無かった場所だが、、



普通に、開いている。




タイミングが悪く。



今日は人が沢山居た。




「もっと早く来なきゃ駄目だな、、」



早々と会計を済ませる。




ウィーン、、




スーパーを出て。



私の袋の中に入っていたのは、



作られたお弁当だった。




ガサガサ、、




「またやっちまったよ、、」




自炊。




頭の中では、そう考えているのだけれども。



袋に入っていたのは、決まって弁当だった。




人が多かったから、ゆっくり見れなかった。




なんて、何回もやっている事を言い訳する。




「まだ、ぬけきれてないんだな、、」




夕暮れ時。



綺麗なオレンジ色。




日が落ちると、肌寒く感じる。



でも。悪くは、無かった。




何だか今日は歩きたい気分だ。



こんな気分転換が出来るのも。



良いものだった。




知らない道。



知らない場所。



「この自販機安いな、、」




知らなかった事。



「、、ん?」




これが。彼女との。



運命的な、出会いだった。




「弁当屋か、、」



古い、昔ながらのお店。



貼られたメニューも豊富で、



値段もリーズナブルだった。




「いらっしゃいませ?」



中から覗く女性に、私は胸を射たれた。




うはっ、、。



もろ、、タイプだ、、 




そんな下心を抑えながらも、



身体は彼女へと近付く。



「御決まりですか?」



「いえ、、。」




滅多に無い。



稀に起こる、息が出来なくなる現象。




凄くタイプな人が居ると。



私はこうなってしまう。




落ち着け、、。



大丈夫だっ。。




自分の服装を見て、我に返る。



おやじサンダルに、伸びきった長T。



しょっぱくなった七分丈のズボン。




「すいません、、。



また、来ます。」



私は走り出した。




こりゃ駄目だ。




その場から逃げる様に帰った。



「はあ、はあ。




はあ、、」



運動していないからか。




少し走っただけなのに。



体力は、十分過ぎる程に衰えていた。




「あぁあ、、。



何やってんだよ、、」



こんな出会いがあるなんて。




知っていたら。



もっときちんとした服装をしたのに、、




憂鬱な気分になりながらも。



テレビを付けながら弁当を食べる。




綺麗な人だったな、、




歳は30後半か?



あまり化粧をしてなくて、、




私のタイプだった。




残りの仕事を終わらせて、



シャワーを浴びる。



「よしっ!!」




風呂場から出ると、コーヒー牛乳を直に付ける。



グビッ、グビッ、、



「っぷはぁあ、、」




ビールも良いが。



今日はコーヒー牛乳の気分だった。




「明日は買うぞ!!」




こうして、私の推し活は始まったのだった。





















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