ニートうりゅうとおとーとのオレ
闇谷 紅
ニートうりゅう
「ニートうりゅう」
そんなペンネームのフリーライターが居る。だが、ただのフリーライターではない。絵も描けてイラストレーターとしても活動している人物だ。
「文章もイラストもかけるから二刀流。拙者、出不精ゆえに『ニートうりゅう』と名乗るようにした由」
自身のプロフィールでかの人物はペンネームの由来についてそう語っている。
「同じ引きこもりでもうちの姉貴とはえらい違いだよなー」
ことあるごとにオレは少し大きめの独り言でそう言っている。ニートうりゅうのイラストやネットに投稿してる小説なんかも好きだと公言したりもしている。ので、今頃姉貴は自分の部屋でニヤニヤしてるんじゃないだろうか。
「そのニートうりゅうがあたしだとも気づかずに」
とか何とかそんな風に。
「神絵師や押し作家が家族だってことに気づいていないシチュエーション」
こう、ネット小説なんかでたまに見かける設定ではあるし、実際そんなこともあるんだろう。ニートうりゅうがユーザー登録しているとある二次創作サイトでニートうりゅうのユーザーページを覗くと、お気に入り小説が50近く登録されているのだが、その内三本はオレが書いたものだと言うのに、姉貴が気づいた様子はなく。
「まぁ、アレがなかったらオレも気づいていたか微妙なんだけどな」
ある日、貸していた漫画を返してもらおうと行った時、見てしまったのだ。ソファで腹出してがーがーいびきかいて寝てる無残な様ではない。
「何だよパソコンつけっぱじゃねーか」
スクリーンセイバーが起動中とはいえつけっぱなしになっていて気になったパソコンのマウスを触ると、画面いっぱいに出てきたのは、ニートうりゅうの未発表イラストだったのだ。
「ソシャゲ敵キャライラスト/仕事用」
描きかけのものではあったが、イラストタイトルの方がそんな感じで全力で商業用のモノになってる上に隅っこに「ニートうりゅう」とご丁寧に銘まで入っていた。
「ああいうのって描き終えてから入れるモンだと思ってたんだけどな」
ともあれそんなぽんこつな姉貴はまだオレがニートうりゅうの正体に気づいていることに気づいている様子はない。オレは絵は描けないし、文章方面のモノ書きとしてもお金をもらってる姉貴の方が明らかに格は上なのだが、二次創作作家のオレに感想の返信を貰った日とかやたら機嫌が良かったりするのを見ると、何とも言えない気持ちになるのだった。
ニートうりゅうとおとーとのオレ 闇谷 紅 @yamitanikou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます