第24話
「はあ、いつになったらマナミ嬢は、僕を認めてくれるのかな……。最近はストーカー扱いだし……」
私、バン・ビルバレットはビルバレット侯爵家の嫡男である。しかし、実子ではない。僕は侯爵の妹の子供だ。それも、魔界の王ランベルト陛下との子供だ。母は僕が産まれて1年後に死んでしまった。産後の身体に、魔界の魔気が毒なってしまったんだ。赤子の僕も母と同じく魔気にあてれ瀕死の状態だった。そんな時、侯爵の1人息子が毒を盛られて殺されてしまい、僕がその子の代わりになる為に人界に来たんだ。
けれど問題があった。僕は父親似だったのである。
侯爵の息子は銀髪にパープルの目をしていたが、僕は漆黒の黒髪に黒目だ。顔付きだってどう見ても、可愛い系の顔をしていた侯爵の息子には見えない、僕は可愛い系ではなく何処にでも居る平凡な顔だ。
だからランベルト陛下から貰った、僕が侯爵の息子に見える幻影術の術式が刻まれた指輪をして、周りの人の目を欺いていた。ただ、付けていると術式を発動する為に勝手に魔力が吸い取られてしまい、夜には魔力切れで寝ると言うよりは気絶していた。
そのおかげで魔力もどんどん増えていって、14歳を過ぎた頃には魔力切れにならなくなり、疲れる事すらなくなってきた。そして、天界の奴等の神力の匂いが、分かる様になっていた。たまに僕に会いに来る父さんに『天界の奴等の甘ったるい匂いは、鼻についてたまらん!』って、言っていたいた意味がよく分かった。
その甘ったるい臭い匂いが、凄いスピードで僕に近付いてきている。
マナミ嬢を守っている(聖国に来る前に密かに付けた)気配を消せる使い魔の目を通して、城の中の出来事を見ていたから、蹴り飛ばされた奴の軌道を計算し先回りして待っていたんだ。
奴には、聞かなきゃいけない事があるからな。
「さあ、やりますか!」
魔力で作った網に奴は、丁度良く僕の所に飛んで来た絡まってくれたから、顔にへばり付いているミケラ様を剥がして、父さんが居る魔城へのゲートを開くと、玉座に座り『よくやった!』っていう様な顔をしている父さんの顔にイラッとしたから、顔面めがけて投げ付けてやった。
「ちょっと〜!痛いから離してくれないかな〜!」
「ああ、すみません」
奴の顔からミケラ様を剥がす時に、後頭部を鷲掴みにしていたんだっけ。
ミケラ様の後頭部から手を離すと「こんにゃろ〜」っと僕を睨んでくりが、狐の姿だからか可愛く見えてしまう。
「皆んなして僕の扱い酷くな〜い!アムラ様の神使なんだよ〜!もっと優しくしてよ〜!」
「何をワガママを……。マナミ嬢と、一緒に居られるのに……」
「当たり前じゃ〜ん!僕とマナミは絆で繋がってるからね〜!」
何が絆で繋がってるだ!マナミ嬢の魂を勝手に繋げたくせに!必ず解いてやるからな!僕の事をストーカー呼ばわりするけど、勝手に魂を繋げて思考や感情や居場所を把握している狐の方が、マナミ嬢のプライバシーを侵害する変態の犯罪者じゃないか!
「……必ず、その絆を断ち切ってやる……」
「やれるものならやってみなよ。お前如きが出来るならね」
いつもの可愛らしい声ではなく、地を這うおどろおどろしい声でそう言う姿は、いつもの愛らしい狐の姿ではなく、狐の姿が見えなくなる程の黒いオーラを纏っている。
全く、なんとも
「それで、奴に触れて何が分かったんだ」
「ああ、
「その半分は、何処にいる」
「王子の匂いがしたので、王子の中にいるかと。それと、多分ですが、前回の時に奴も居たと思われます」
「はっ!多分だと?魔界の者が、そんな曖昧な事を言うな。これだから半端者は駄目なのだ」
『半端者』僕が魔界で呼ばれてる名だ……。
純血主義の魔族にとって、人間の母親から生まれた僕は『混ざり者』『半端者』と、罵られた……。
そう呼ばれると、母上を侮辱された気持ちになるのを知っているからこそ言ってくる、こんなに奴がマナミ嬢の側にいるのが許せない。
だけど、今は大人しくしてる方が良いだろう。今ですらマナミ嬢と会える時間は殆ど無いのに、これ以上会えなくなるのはもっと嫌だからな。
「今頃は、父に拷問されているでしょうから、有益な情報を得られると思いますよ」
「ランベルトの拷問はエゲツないからね〜!僕はマナミの所に帰るから〜、後で報告よろしく〜!」
「……承知いたしました」
笑顔でそう言いながら、マナミ嬢に会いに行く口実が出来た事に嬉しく、つい顔がニヤけてしまった。
「早く報告しに行かないとな!」
そう思いながら魔界へ向かったのだった。
41歳独身、異世界で小料理屋の女将始めます いちとご @ripoff
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