第23話
私の撃ち放ったミケラ大砲により、城に大きな穴が空きました。いや〜、流石は神使いのミケラさん!いい仕事するね〜。ミケラが開いてくれたら道を無駄にはしないわ!
なにより、トーマス様に害を為す奴など許すまじ!(上手く乗せられた感があるけれど……)
そして、城の中はカオス状態でした。
瓦礫と砂埃の中で泣き叫ぶ女の子と、その子をあやす神官達。儀式に参列していたであろう貴族達が、我先にと押し合いながら逃げ出そうとしている。瓦礫の下敷きになり頭から血を流して倒れているアーノルド王子(生きてるのか?)を誰も助けようともしていない。
王子を護衛する筈の近衛騎士団達は、長い髪も服も全てが真っ白な男性か女性か分からない中性的な容姿をして、なにやらミケラを睨み付けてる人を、狐姿のミケラから守ろうとしている姿は滑稽だな。
とりあえずミケラの所に行こうかね。
「アムラの下僕如きが!私に歯向かっていいと思ってるの〜!」
「ちょっと〜!アムラ様の下僕って酷くな〜い!」
「ふん!私からみれば〜、アムラの下僕よ!あんな老ぼれなんて〜、早く死ねばいいの〜!」
「僕は真奈美の下僕なの〜!それにさ〜、さっきからアムラ様の事を侮辱してるけどさ〜」
そう言うと、毛を逆立ててフサフサの尻尾でバシ!っと床を叩くと「殺すよ?」って男っぽい声で言うではないか!
んな!!ミケラってば!殺すよ?って!
確かにあの人はなんかムカつくけど、あんた。普通に喋れるのね…
まあ、ミケラのご機嫌でも伺うかね?
そんなミケラを抱き上げて腕に抱えて背中をナデナデしてあげると、興奮が落ち着いたのかいつもの指通り柔らかなもふもふに戻っていった。
「ミケちゃんや。そんな怒って、どないした?」
「アイツがさ〜、アムラ様の事を侮辱するから〜」
「あんな頭おかしい危ない人の言葉なんて、気にする事ないのよ」
「うん!分かった〜!」
「ちょっと〜!人間!頭おかしな危ない人って〜、誰の事を言ったのかしら〜?」
「え?あんた以外に誰居るの?」
「な、なんですって〜!誰よりも力があり〜、誰よりも賢いこの私を〜!頭おかしいですって〜!」
「どう見てもそうじゃん。いい大人が、そんな変な喋り方で子供みたいな事を言ってさ。キモッ!」
「っな!なんですって〜!!」
「あはは〜!キモいキモ〜い!」
ミケラよ。肉球で変態さんを指しながら笑ってるけど、お前の喋り方も大概だぞ?
「ところで、トーマス様を狙っているのは、アンタかしら?」
「トーマス〜?誰のこと〜?」
「はっ!惚けるのはおよし!トーマス様とBとLするのは、アンタじゃないのよ!」
「……え?」
「麗しきトーマス様を天界に連れて行って、魅惑の園の仲間に入れようとしてるんでしょ!」
「……みわ……?え、なに?」
「トーマス様の貞操は私が守るのよ!アンタは豚の尻の穴でも舐めてな!」
「何を訳の分からない事を言っている!人間!」
「お天道様は誤魔化せても、私の目は誤魔化されないのよ!アンタがトーマス様を我が物にしようしてる事は、まるっとお見通しだ!」
「だから!トーマスって誰なんだよ!」
「あ〜れれ〜?焦ってるからかな〜?口調が変わってるよ〜?真奈美の言う通りかもね〜!」
「やっぱり!トーマス様は、老若男女全ての人を魅了する力があるのよ!!」
「は〜、人間の戯言に惑わされる所だったわ〜!とりあえず、アナタ達も私の奴隷になりなさ〜い!」
白いキモい人が、ごちゃごちゃと何かを言いながら杖の先端をこっちに向けると、銀白色の煙が出てきて私とミケラの方に伸びてきて一気に包み込まれた。この霧は聖国に着いた時に見た霧かしら?
しっかし、酷い悪臭だ!まるで酷暑日が続く真夏のごみ置き場の臭いだ!
「うわ!くっさ!何これ!臭くて鼻が!」
「これは洗脳術だね〜!天界では禁術だよ〜!」
洗脳ですって!私達を洗脳してどうするのよ!ってか、それより、鼻が、鼻がムズムズして…、クシャミが…!
「やばっ!鼻が!ハックシューン!!」
私が盛大にクシャミをすると、煙が跡形も無く吹き飛びました。ええ、それはもう、綺麗さっぱりと!
「んな!私の……術が……」
「真奈美っては〜!オッサンみたいなクシャミ〜!」
「過敏症なんだからしょうがないじゃん!あ、またで、ハックシューン!」
「貴様!!殺してやる!!」
「え?嫌だけど?」
鬼の形相でこっちに向かってくる!やだ!キモい!
「とりあえず、ミケラアターク!」
私は大きく振りかぶって勢いよくミケラを投げました。メジャーリーガー顔負けのトルネード投法で投げたミケラ球は、「また〜!!」と、悲鳴を上げながら豪送球でキモい人の顔面にクリティカルヒット!
ミケラ球が当たり後ろに倒れそうになった所に、お爺ちゃん直伝瞬間移動走法で背後にまわり込むと、右足に魔力をたっぷり込めて、尻めがけて〜、打つべし!!
キモい人の尻を見事蹴り上げると、ミケラと共に城の屋根を打ち抜いてお空の彼方に飛んで行きましたとさ。
女の子はさっきよりもギャン泣きして、宥める神官達も泣き始め、洗脳から解けたのか騎士達は城が半壊している事にパニックになり、アーノルドは相変わらず瓦礫に埋まっているけれと。
「まあ、これで無事一件落着、かな?」
「じゃなーーい!!」
気を失って瓦礫に埋まっていたアーノルドが、瓦礫を勢いよく投げて立ち上がると、血だらけで真っ赤になった顔でこっちに向かってきた。その表情からは焦りと怒りが読み取れた。私は何かしくったのかな?
「こんな事して、どうしてくれるんだ!」
「え?何が?」
「あの神だよ!また時間を戻して!って、あれ?自分で動けてるし……、喋れてる……」
「はあ?そりゃそうでしょ。自分の身体なんだから」
「そう……。自分の……、自分の身体に!」
アーノルドは自分の両手の掌を見つめながら涙を流しながら「身体が、戻った」と呟き、顔や腕など身体中を触りはじめた。まるで乗っ取られていた身体を取り戻せたかの様だ。そんなアーノルドの姿が、20歳になるのに少年の様で可愛く思えた。思わず頭を撫でようとしたその時に「これは、いったい……」っと、私の神様の声が聞こえ振り向くと、そこには神々しい美しさのトーマス様がこちらに駆け寄ってくるではないか!
「マナミ!無事か!」
「トーマス様!敵を無事退治しました!」
「あ、ああ。お疲れ様。マナミが無事で良かった」
「トーマス様のために、玉座は死守しました!さあ!お座り下さい!」
「い、いや、駄目だよ。あそこは王様の……」
「いいじゃん!座ろうよ!」
そう言いながらハミルトン様がトーマス様の手を引っ張って走って行くその姿は、まさしく7枚目のシングルのPVそのまま!あーー!!やばい!!尊い!!
私は2人のキャッキャ!ウフフなシーンを、ひたすら映像石に録画するのであった。
ミケラを肩に乗せて「まるで、カオスですわ……」と、呟くアリシアに気付きもせずに……。
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