第22話

わたくしの予想通りの展開になりました。

魔術国家第1魔術師団長ハミルトン・D・グリーンベル様を見た瞬間に、お姉様がおかしくなるだろうと予想は付きました。そして、聖女の召喚を止めるのに間に合わない事もです。

さて、国王様が困っていらっしゃいますしそろそろ動きましょうか。


「ああ……、なんて事だ……、聖女の召喚が……」


「国王様。わたくしに考えがあります」


「アリシアよ、考えとは何かね?」


「今は言えませんが、お任せ願えますか?」


「……良かろう!アリシアに任せよう!」


「ありがとうございます。少々、王城に被害が出るかもしれませんが、お任せ下さいませ」


「うむ!……え?被害?ア、アリシア?」


国王様の承諾も得ましたし、後はお姉様ですね!

お姉様はお父様との時間を邪魔されて怒っていらっしゃるとミケラ様が教えて下さったので、王城にいる天界人の所為ですと伝えれば、お姉様も直ぐに王城へ向かうでしょう。


「お姉様、落ち着いて下さいまし」


「アリシア〜!トーマス様との、尊い会話の時間を邪魔されたー!」


怒りに身を震わせながらそう言うお姉様に、城に居る馬鹿共のせいだと言ったら面白い事が起きそうね!ふふふ!


「お父様との大切な時間を邪魔されて、可哀想なお姉様」


「ア、アリシア……、何を言っ……」


「お姉様の大切な時間を奪うなんて!わたくし許せませんわ!」


「アリシア〜‼︎」


涙ながらにわたくしに抱き付いてきたお姉様の頭を撫でようとすると、褐色の細くて長い指をした大きな手がスッと伸びてきて、お姉様の青みかかった綺麗な黒髪を撫でるではありませんか!許すまじ!

その手の主人を睨み付けると、「任せて!」と口を動かし嫌らしい笑顔を向けてグリーンベル様に殺意が湧きましたが、どうするのかお手並み拝見と致しましょう。


「マナミちゃんは可愛いね!」


「んな!か!かわ!」


「可愛いマナミちゃんにさ、お願いがあるんだ!」


「お願いですか!?トーマス様の忠実なる下僕の私が、ハミルトン様のお願いを叶えてあげましょう!」


さっきまで泣きそうな顔をしていたのに、キラキラと目を輝かせていますわ……。なんだか、お姉様がこの男の術中にハマったみたいで嫌ですわ!


「王城にいる神が、コーデルハイム卿を狙っているという情報を掴んだんだ」


「っ‼︎‼︎トーマス様を狙うだと‼︎‼︎」


「ああ、天界に連れて行きコレクションにするんだと…」


「コレクション……、だと……」


「そうなんだ!コーデルハイム卿なな法悦を与え、奴の奴隷にするつもりらしい!」


ま〜、なんて大根役者なんでしょう……。こんな嘘臭い演技に騙され…


「トーマス様に手を出すなんて許さな――い‼︎トーマス様!悪者を退治して来ます!」


たわね……。こんな三文芝居に騙されなんて、流石はお姉様だわ。


「ミケラ!行くよ!」


「え〜?僕もい……」


わたくし達の足元で、触らぬ神になんとやらと傍観していた白狐姿のミケラ様の頭を鷲掴みにすると、右足を大きく振りかぶると勢いよく投げましたわ!ミケラ様は凄まじい速さで聖女が召喚された玉座の間に飛んでいくと、「ドーン」と、大きな爆発音を響き煙を立てながら純白の壁と屋根が崩れ落ちていく様を見て「お……、王城が……」と、膝から崩れ落ちる国王様に、申し訳ない気持ちになりますわ。


「マナミ!いっきまーす!」


そう叫び地面を蹴りあげて王城に飛んで行き、煙の中へ消えて行きました。お姉様を焚き付けた張本人でもあるハミルトン様は呆けた顔をして「あの子……、なんなの……?あそこまでするとは、思わなかったんだけど……」などとほざいていますわ。鳩が豆鉄砲を食らった顔とはこの様な顔の事を言うのでしょうね。


「さて、わたくし達も行きましょう」


お姉様が暴走して、王城を破壊してしまう前に。

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