「救助…」 

低迷アクション

第1話

「馬鹿な奴等だな。戦闘中に一休みとは…」


友人“L”の体験である。数年前、彼は地元の山で仲間達と

違法なサバイバルゲームを行った。法律で公式フィールド以外のゲームには罰則がある。

しかし、銃と迷彩服に身を固め、茂みや木々を潜み、走り、撃つ“実戦”さながらの、

山岳戦の魅力は、マニアにとっては抗いがたきものである。


幸いにして、地元の山は、登山が盛んな場所ではなく、時期を選べば、人の出入りは皆無であり、ゲーム環境に適していた。


ゲームルールはメンバーを2つに分け、どちらかが全滅するまで、戦う内容…

朝から戦闘を始め、何度目かのゲームの際、単独行動を取っていたLは、


自身の場所から、数メートル先、薮の開けた岩場で休憩する敵チームの2人見つけ、

冒頭の言葉を呟く。


1人は岩に腰かけ、もう1人は、座っている方を覗き込むように顔を近づけ、何かを話している様子…


(座ってるのはマスク被ってっけど、迷彩柄からして“H”だな。もう1人の方は…

ギリースーツか(草を被ったような偽装網的服装)緑黄色迷彩じゃなくて、黒色…

今日みたいな晴天じゃ却って目立つだろ?)


茂みに身を潜めるLからでは、立っている方は背中しか見えない。黒っぽい服装も相手の

正体を隠す事に一役買っている。


(さて、どちらから撃つか?)


座っているHは銃を足元に置いていた。もう1人は武器を持っているかは確認できないが、

仮にHを撃ったとして、相手が振り向きざまの反撃を行った場合、こちらがやられる可能性が強い。加えて、立っていれば、発砲音に、すぐの反応ができ、銃撃を回避してしまう心配もあった。


(先は立っている方、Hは次…)


順番を決めた彼は黒い背中に狙いをつけ、引き金を弾く。モーター音の銃声が響き、

飛び出したBB弾は正確に目標へと命中する。


「わひょっ!?」


奇妙な声、というより鳴き声?を上げ、立っていた人物は、こちらを振り向く事なく、

Hを飛び越え、向こうの茂みに姿を消す。


その動きに驚いたLが立ち上がるのと、Hが叫んだのは同時だった。


「あああ、おっかねぇ、動けんかった。誰もこねぇ山ん訳だ。おっかねぇ、おっかねぇ…

おっかねぇよおぉぉ」


半分錯乱状態のHがキッカケとなり、ゲームは終了となった。後日、そして、今に至るまで

彼が見たモノはわからない。本人も、固く口を閉ざしている。


この話を終える時、Lは、いつも苦笑いのような顔でこう締めくくる。


「俺…何撃った?一体?」…(終)

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「救助…」  低迷アクション @0516001a

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