平凡たるチェルカさん~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
迷宮ではいかなるモノも拾いモノである……多分。
「ニトウリュウ~? あ?
ここは
迷宮からは
かく言う私もその一人で、探索者生活を始めてかれこれ数年が
迷宮の
なので、竜は狩れないけれど、
だって竜の素材だ。仮に
そんな
一杯三シルド、
運ばれてきた麦酒をお互い手にして、
「いやいや、チェルカ……竜じゃない、竜じゃ。ニトウリュウ……そうだな、うん、ほら、コレだ、コレ!」
私の名前を気安く呼び捨て、男は自身の腰に装備していた大小の剣を
あぁ、なるほど
「つまり、
左右両方の剣を
そう言えば聞こえはいいが、
けれど
「いや、まぁ、確かに見た目は双剣使いなんだが、使ってる
あぁ、あの
「待って……まさか、カタナの双剣使いがいるってこと?」
「ご
「わぁ~、絶対に
楽しげな様子で語る男性探索者に、心底げんなりしながら言葉を返す。
双剣使いだけでも関わり合いたくないのに、刀なんて
「で? そのニトウリュウ~? のヤツは表層のどの
「おう、なんでもここ数日の目撃情報だと――、」
さておき、期待した話ではなかったけれど、
うん……しばらくの間はニトウリュウが現れた迷宮区画には行かないようにしよう。そうしよう……。
★ ★ ★
翌日、ニトウリュウがいないであろう迷宮区画を選んで探索に出かける。
目指すは
ちなみに区画といっても
探索エリアを
今日、探索するのは西口から入って少し北。
他と比べてそこそこ危険性の低いエリアである。まぁ、その分、実入りもほどほどに少ないのだけど、私みたいな
さて、迷宮への入口は大穴の近くに建てられた石造りの建物、その内部にある。
不思議なことにこの迷宮、大穴から直接侵入しようとすると、どういうわけか底なしらしく、ちっとも地面に
なので、偉大な先人というか馬鹿な先輩たちは考えたわけである、真上が無理なら横から穴を
しかし、これが大正解。
そして、これが封印迷宮シルメイズの探索が始まった
で、今回利用する西口は三番目に作られた比較的新しい入口である。
利用受付の係員に必要書類を提出し、地下へ続く階段を少し降りて横穴を進む。
この横穴、
前に一度じっくり見たことがあるのだけど、その
他は、まぁ……なんというか、本日の
だって、まかり間違ってなにか重要な呪符や術符だったら、非常に
ゆえに、壁一面の貼り紙や短剣、釘は減ることなく、毎日少しずつ人知れずに増えていく……恐い。
そんな横穴を抜けると、
天井が薄緑色に
目指す第十階層・WNの二区画までは、まだ少し遠い……。
★ ★ ★
というわけで
第三階層で例のニトウリュウらしき
頭からつま先まで
うん……間違いない。というか、事前情報なしに出会ったら新種の
ありがとう、顔見知りの探索者。これは麦酒三杯でお釣りがくる……。
さておき……不運な
だって、
このまま
そう思い
いや、いやいやいや……まさか
狩り尽くすものに、探索者が入っているとか笑えない
冗談だが、その手の人種はある一定数いるので、探索者は迷宮内で出会っても、命に関わる緊急時以外、
だというのに、明確な意志を持ってこちらに接近してくるニトウリュウ!
よしっ、逃げよう……私は
えぇ……死んだ探索者を回収する『
あ、いや……まだ死んでないか。しかし、
★ ★ ★
数時間後、どうにかこうにかニトウリュウを
いや、偉いねチェルカさん……何度か本気で捨てていこうかと思ったけど、無事に戻ってこれたわ。人間、やればどうにかなるもんだ……。
それからニトウリュウを
なので、
「このたびはご迷惑をおかけしたのでち。ご
麦酒を飲む私の対面に座り、両手に骨付き肉を持ちながら深々と頭を下げるニトウリュウ……。いや黒髪の少女、二刀流のサクラコ。
どうやら話を聞くと
これは
いや、出会ったこっちは不運なんだけどね……?
まぁ、でも、これは案外拾いモノかもしれない……。
表層とはいえ
よしっ、決めた……これは私が引き取ろう。
迷宮で拾ったものは人間だろうと財宝に違いない。それが迷宮都市という場所だ。
ちょうど
あと、この子なんでも素直に言うこと聞いてくれそうだし……。
「うん、
「でち!」
さぁ~て、明日からも
平凡たるチェルカと二刀流のサクラコ。のちにこの二人が迷宮都市の
……to be continued?
平凡たるチェルカさん~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
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