第2話

私の顔を見ると、はにかみながら「大丈夫?」と溌剌な声をだした。

 青のジーンズ姿の彼は、水色のポロシャツから地図を取り出して、この街からの出口を探しているかのようだった。

「あの……。あなたもこの街で迷子に?」

「ああ。そうだよ。もう一日中歩きっぱなしだ。お腹も空いて、財布も空で……」

 私はあの不気味な料理店を思い出し、気分を悪くすると、顔が青味がかったせいか。青年が心配した。

「大丈夫か? 俺より君の方が痛かったんじゃ?」

「ううん。でも、この街から出られるのかしら?」

 青年は地図を広げているので、この街の迷路を出口までわかるはずではないだろうか。

 すると、

「いや。知らないんだ。地図が古くてね」

 私と青年は二人で街の出口を探した。


 青年の名は、蓮野井。


 大学生で友達と二人で、この街の知り合いを探しに来たといった。

「もう一人は同じ大学の悪友さ」

 蓮野井はいきなり笑い出した。

「あいつ。確かにとうに死んでいるはずなんだ。ただ、この街が懐かしくてね。死んだ知り合いを探したくて、もう一度来てしまった」

 私は妙に納得し、

「私もよ。とうに死んだおじいちゃんの家がこの街にあったみたい。母から聞いた。それで懐かしい感じがしていたんだ」

「この街って、一体なんだろうね。死者が集うような街じゃないみたいだしね」

 お腹が空いて、歩くのも億劫になってきた。

 もう心細さはないが、疲れて、歩く気力がなくなった。

「仕方ない。あの店に入ろう。奇跡的に千円札だけ胸ポケットに仕舞ってあったんだ。これで、財布は本当に空っぽだね」

 黄泉という名の暖簾が垂れ下がる店だった。

 私は気分を悪くしたが、店の匂いは良かった。


 店内には、客がいないが、またもやカウンター席だけで、調理人はまともと表現できる恰好だった。

「なんにしやしょう」

「適当に。千円で二人分」

「あいよ」

 調理人は手際よく。ネギをみじん切りにし、茹で上がった蕎麦の上に置くと、カウンター席に二人分置いた。

「やったー、腹ごしらえ」

 私も安堵の溜息をついた。喜び勇んで箸に手を付けた。

 青年は早速、蕎麦を啜り。

 腹も膨れ、しばらくまた街を迷うことにした。


 道中、建物の外に占い小屋があった。

「この街に来たのかい。もう出られないよ」

 老婆の占い師が客引きのような素振りで、話し掛けていた。

「え? そうですか。やっぱり」

 私は蓮野井の言葉に首を傾げたくなった。

「いやいや、お前さん。そうじゃなくて、そっちの娘さんに言ったのさ」

「え、私?」

 占い師の占い小屋へと寄ると、異様なカードが並べられたテーブルに一つのカードがあった。

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