異様な料理店
主道 学
第1話
柔い日差しが降り注ぐ街だった。私は初めて来た街だが、なんだかとても懐かしい。友達とはぐれて一人。道の真ん中で佇んでいた。ただ、道に迷っていた。
日差しを遮る薄暗い建物が建ち並び。私は日陰を纏っていた。まるで、夜中の道を歩く。迷子の子犬のように。
静香とはどこではぐれたかも。今や記憶から遠ざかり。すでにこの街の名も忘れていた。電車の中で静香から聞いた街の名は、今では頭の片隅からも一欠けらさえも消えている。
冷や汗が浮きでては額を腕で拭う。
夏休みに友達の静香と遠方へ向かったが、一人この街にぶらりと足を向けていた。今では祖母の家までの長い道のりを思うと心細さに拍車がかかった。思い出したかのように、私はこの街へと来てしまっていた。
一人。ひたすらに街を歩き続ける。
次第にそれぞれの建物から明かりが点いていく。日陰を纏ったせいでわからなかったが、今は何時だろうか。
お腹も空いて、道に迷って、心細さで近くの建物に入った。
「いらっしゃいませ」
真っ赤なエプロンと真っ赤なキャップの店主が、出迎えた。
そこはカウンター席しかなく。どこか異様な料理店だった。お金も少しはあるので、幾つか頼むと、店主は大掛かりな料理を作りだす。
魚の目玉や唇の野菜炒め。どう見ても人間の幼児の腕が生えた煮物。金魚の姿が乗った得体のしれない刺身。
誰もいないはずの席から、「ここの料理は美味しくて、毎日来ているんだよ」と、声が聞こえる。
私は悲鳴を上げ、お金を置くと一目散に料理店から逃げていった。
闇雲に道を走っていると、一人の青年にぶつかった。
「痛てて」と顎を摩るその青年は、私の頭が青年の顎に当たったようだ。その青年は年も私よりも上のように思えた。
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