第757話 感謝する男 2
(前回からの続き)
「
「だと思いますよ」
「じゃあ僕が行って説明してこよう」
「助かります」
オレは手術室の外の待合スペースで愛田先生を……探すまでもなかった。
見た事のある顔がそこにいたからだ。
愛田先生も同時にオレの顔を認識したようだ。
「今、血腫をとったところですが、その原因となった
「ええ」
「このままAVMも取ってしまいたいんですが、よろしいでしょうか?」
「是非お願いします!」
という事でそのまま手術室に引き返した。
「愛田先生の同意はもらったから、このままAVMも取ってくれ」
「分かりました!」
その間、オレは部屋の隅にある端末に向かった。
正式な手術同意書は紙にプリントしたものに署名してもらうが、今回の手術拡大は口頭での同意だから待合でのやりとりを電子カルテに記録しておく必要がある。
幸いAVMは脳表に限局したものだったので順調に摘出することができた。
問題は救命できるか否かだ。
さらに、救命できたとして意識が戻るのか。
そして……
たとえ意識が戻ったとして重大な後遺症が残るのは間違いない。
問題は山積みだ。
術後は
幸い30代の若い心臓は力強く拍動している。
が、意識が戻るどころか自発呼吸すら出なかった。
今後の治療方針をどうするか。
脳外科の中でも意見が分かれた。
「無駄な延命治療はやめて楽にしてあげましょうよ」
「いや、まだダメと決まったわけじゃないだろう!」
「脳死か植物状態かの2択でしょ、治療の意味あるんすか?」
スタッフたちが口角泡を飛ばしている中、担当医のレジデントは黙々と気管切開を行い
そうこうしているうちに徐々に自発呼吸が見られるようになった。
が、それ以外には何の反応もない。
「脳死は
そう思われつつリハビリ病院に転院したのだ。
植物状態の患者にリハビリって……
何それ!
何のリハビリをするわけ?
医療関係者なら誰もがそう思うだろう。
第一、受け入れてくれるリハビリ病院があるとも思えない。
が、
ちなみに患者である愛田
彼女の専門は神経内科だった。
皆が彼女の回復を願い知恵を出し合った。
が、いくら考えてもどうなるものでもない。
できる事と言えば、彼女の回復力と運の強さに期待するくらいだ。
が、現実は常に想像を超える。
(次回に続く)
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