第752話 アスピリン喘息の女

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【緊急速報!】

脳神経外科の巨星、福島孝徳たかのり先生が2024年3月19日に81歳で亡くなったというニュースが報じられています。タカ・フクシマの愛称で世界を舞台に大活躍した福島先生は、私にとっては野球の大谷翔平、将棋の藤井聡太のような存在でした。もっというと、高校野球に出場するメジャーリーガーの大谷翔平といったところでしょうか。とにかくレベルの違う人でした。幸い、私は直接お会いする機会に恵まれ、またカダバーディッセクションと呼ばれる解剖実習や手術見学にも参加させていただいた事を思い出します。福島先生のエピソードについては改めて述べることといたしましょう。不世出の脳神経外科医、福島孝徳先生の御冥福をお祈りいたします。(2024.3.22.記)

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 過日、肺炎球菌ワクチンを打ってもらえないか、という問い合わせが総合診療科にあった。

 なんでもアレルギーがあるので、かかりつけ医が接種してくれないのだとか。

 どんなアレルギーか詳細が分からなければ当院でも打てるかどうか分からない。

 だからとりあえず来てもらって問診し、その結果が良ければ翌週にワクチンを打つことにした。


 で、御本人の書いた問診票にはアスピリン喘息とある。

 アスピリン喘息と言うのは一般にNSAIDsエヌセイズと言われる非ステロイド性抗炎症薬を使用した際に喘息発作を起こすというものだ。

 アスピリンは代表的なNSAIDsなのでアスピリン喘息と呼ばれることが多い。


 実際にはCOX-1コックスワン阻害薬に対するアレルギー反応なので、同じようにCOX-1を含有するロキソニンとかボルタレンのような薬剤でも喘息を起こす。


 したがってアスピリン喘息の患者に対する解熱薬としてはカロナールやアンヒバなどのアセトアミノフェンを使う。


 ここで混乱しやすいのが「ピリン系」とか「ピリン禁忌」という言葉だ。

 名前は似ているが、いわゆる「ピリン系薬剤」にはアスピリンは入っていない。

 病院で使うピリン系薬剤は、スルピリン、メチロン、SG顆粒、 クリアミンなどだ。

 市販薬にもピリン系薬剤があるが、その見分け方は成分表示のところにイソプロピルアンチピリンが入っているか否かになる。

 入っていればピリン系薬剤だ。


 肺炎球菌ワクチンにはCOX-1のような成分は入っていないので打つことは問題ないはず。

 理屈ではそうなるが、こういうことは良く確認することが大切だ。

 そこで、患者本人に診察室に入ってもらい詳細を聴くことにした。


 そこで判明したのは驚くべき事実だった。


(次回に続く)

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