第734話 「竹田くん」を思い出す男
脳外科医竹田くんの事は第448話「『竹田くん』を読む男」と第512話「『竹田くん』を追う男」でも述べた。
おさらいしておく。
「脳外科医 竹田くん」というのは実在の脳外科医をモデルにしている漫画だけど、もちろん竹田くんというのは仮名だ。
赤池市民病院という田舎の病院に赴任した竹田くんは2ヶ月間で実に8件もの医療事故を起こしてしまった。
その後、病院から執刀中止を命じられ、専門医試験も受けさせてもらえず、とうとう辞めてしまった。
もともとの漫画「脳外科医 竹田くん」では地元メディアや医療事故被害者に追及されたり、日本脳神経外科学会に赤池市民病院が訓練施設の認定を取り消されたりしたところで終わっていて、竹田くんのその後については触れられていない。
狭い業界なので竹田くんのその後については密かに話題になっていた。
「次は何をしでかすんだ?」と。
で、この竹田くん。
大阪の某病院で救急医として働いていたところ、そこでもやらかしてしまって訴えられたというニュースが入ってきた。
報道によると週3回の慢性透析をしている90歳の男性患者がコロナにかかって入院となったのが竹田くんの勤務する某病院。
このときの担当医が竹田くんだったのだが、彼は入院後に1度も患者を診ることなく透析の指示もされないまま2日後に患者は死んでしまったのだそうだ。
開示されたカルテを確認すると、竹田くんは1行もカルテを書いていなかったとのこと。
亡くなった患者の娘は看護師であるが、あってはならない事だと憤って約5000万円の損害賠償を求めて民事訴訟を行った。
担当医があの竹田君だった、ということで「またやらかしたのか!」と業界内では盛り上がった。
その後、竹田くんは某病院を辞めて別病院で勤務しているのだそうだ。
別病院のホームページには竹田くんの本名は出ていない。
病院としてはあまり表に出したくない情報なのだろう。
それはともかくとして、このたび現代ビジネスが「竹田くんを直撃取材した」という記事を出している。
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独占スクープ『脳外科医 竹田くん』モデルの医師を直撃…「私は裏切られた」「赤穂市民病院は汚い」その驚愕の主張
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すごいタイトルだ。
漫画では仮名だった赤池市民病院も実名になってしまっている。
記事の本文によれば、竹田くんはパワハラと暴行で赤穂市民病院の元上司を刑事・民事の両方で訴えているとのこと。
刑事は不起訴になったが、民事裁判は続いているようだ。
つまり、彼は表に出ているだけでも2件の裁判で訴えられ、1件の裁判で訴えていることになる。
なんとも忙しい人ではある。
仲間内のちょっとした雑談の中で竹田くんの話が出てくることがあるが、あまり他人事とは言えないのが現実だ。
さすがに2ヶ月に8件の医療事故は多すぎだけど、数年に1件だったら誰しも心当たりがあることだろう。
「オレ、竹田くん化してないかな?」
「いや、全然違いますよ。御安心ください」
そんな会話がヒソヒソとなされているのが現状だ。
竹田くんの今後に注目しよう。
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