第733話 天才を語る男

「天才」という言葉は安易に使われ過ぎじゃないかな。

 お勉強に関してオレがリアルで出会った天才というのは皆無といっていい。


 オレの中学の卓球部の先輩で、東大の理科3類に現役合格した人がいたが、彼は天才というよりは勉強オタクという感じだった。

 駿台すんだい予備校の模擬試験でいつも全国で3位以内という驚異的な成績だったけど、それでも常人の延長線上にいた。

 決して何も勉強していないのに好成績を取っていたわけではない。


 天才的な頭脳を1つあげるとすれば、子供たちの外国語習得だろう。

 米国留学中、知り合いの日本人の子供たちは1年もすれば皆が英語ペラペラになっていた。

 一体、頭の中はどうなっているんだろう、と今でも思う。


 なんで急にこんな話をするのか。


 それは漫画「インベスターZ」を読んでいてに落ちた言葉に出会ったからだ。


 第21巻で道塾どうじゅくの校務員、ゼンさんがこういう事を言っている。


「天才といえども実はシンプルなものだそうですよ。100人の人が思いついたとしても行動するのはそのうちのたった1人。そして100人の人が行動したとしても行動し続けられるのはそのうちのたった1人。つまり1万人のうち1人しか『やり続ける』人間はいない。天才とはじつはそういうカラクリなのだそうです」


 1万人に1人の天才というのはこういう事なんだと思う。


 そういえば、イチローだったか記憶が曖昧あいまいだけど「努力とは膨大な試行錯誤の積み重ねだ」という言葉がある。


 また、「天才! 成功する人々の法則」という本で、著者のマルコム・グラッドウェルは「すぐれたバイオリニストは1万時間の練習をしている」という研究結果が紹介されていた。

 オレの妻の従姉いとこでニューヨークでバイオリンを教えているユカちゃんも「毎日3時間練習すればソリストになれる」と言い続けているが、本当に実行するのはごく一握りの生徒にすぎないそうだ。


 結局はひたすら努力を続ける事が王道なんだと思う。


 ただ、あるレベルに到達するというのと、前人未到のレベルを目指すというのは少し違うんじゃないかという気もする。


 外国語習得のようなものはお手本があるのだから、効率的な努力の仕方ってものがあるはず。

 目的地に向かって最短距離で進む道を知っていれば、それにこしたことはない。

 その上で、才能に恵まれた人間は歩くスピードが速いのだろう。

 それでも途中でやめてしまったりしたら永遠に目的地に到達できない。

 たとえ才能に乏しくても、たとえ最短距離の道を知らなくても、決して諦めない人間はいつかはゴールに到着するはず。


 一方、イチローのように誰も経験した事のない領域に踏み込もうって時には、必然的に試行錯誤になることだろう。


 さて、カクヨム作家として一定のレベルに到達し、さらにその先に進むにはどうすべきか。

 今のオレにできることは毎日書き続けることなんだろうと思う。


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