第717話 星飛雄馬になりたかった男

 オレにとって生涯のベスト漫画が鉄腕アトムなら、2番目は「巨人の星」だ。

 アトムの次に影響を受けた。


 言うまでもなく、親子で甲子園そしてプロ野球選手を目指す物語だ。

 この「巨人の星」にどれだけ多くの子供たちが影響を受けたことだろう。


 なにしろ登場人物が多彩だ。


 幼少期から父親に鍛えられ野球漬けの毎日を送った星飛雄馬ほし ひゅうまが主人公。

 そんな飛雄馬を鬼となって鍛えた元プロ野球選手、星一徹ほし いってつだ。

 もう名前からして頑固一徹だといえる。


 飛雄馬の永遠のライバルは花形満はながた みつる

 これまた名前からも恵まれた人生をうかがわせる。

 花形モータースの御曹司で、中学生でありながらスポーツカーを運転している。


 また熊本出身の左門豊作さもん ほうさくも飛雄馬のライバルだ。

 多くの弟や妹がいる農家の長男で、貧乏さでは星飛雄馬にも負けない。


 一徹と飛雄馬の親子は何かというと特訓をする。

 何事も根性と特訓で乗り越えられるという昭和の価値観そのものだ。

「巨人の星」を含む多くのアニメが「スポ根」つまりスポーツ根性もの、と呼ばれた理由が良く分かる。


 簡単にあらすじを紹介しよう。


 星飛雄馬が青雲高校に入学し、東京都予選に挑んで甲子園を目指す。

 子供の頃から鍛えた豪速球に相手校は為すすべもない。

 時にはアクシデントも起こるが、それを乗り越えて甲子園出場を果たした。

 甲子園では準決勝で左門豊作ひきいる熊本農林高校に勝つものの、決勝で花形満の紅洋高校に敗れる。


 その後、星飛雄馬は念願の巨人軍に入団した。

 ところがプロ入り早々に球が軽いことを見抜かれてしまい、成績が悪化する。

 その後、苦労を重ねてついに大リーグボールという魔球を編み出した。


 以下、大リーグボール2号、3号を生み出したり、恋人の日高美奈ひだか みなが死んだり、色々な出来事が続く。



 それにしても飛雄馬とは日本人の名前としては到底一般的とは言い難い。

 実はヒューマンに由来すると聞いたことがある。

 確かにそれで辻褄があう。


 が、ひょっとして「鉄腕アトム」に起源があるのではなかろうか。

 これはオレの単なる邪推だけど。


 というのも、アトムというロボットは1人息子を亡くした天馬博士てんまはかせが発明したものだ。

 その息子の名前がトビオ、つまり天馬飛雄てんま とびおだ。

 飛夫でも飛男でもなく、天馬飛雄!

 これ、どうみても漢字の順番を入れ換えたら飛雄馬ひゅうまじゃん!

 ひょっとして「鉄腕アトム」へのオマージュか?


「巨人の星」の原作者、梶原一騎はすでに亡くなっているので確認しようがない。

 でも、日本を代表する2つの漫画の登場人物名がそっくりとは、偶然にしても出来過ぎていると思う。

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