第711話 声に出して読む男

 ネットを見ていると色々な人生があると思う。


 オレが読んで感心したのは、とある英語名人の話。

 普通のサラリーマンだったのが、海外赴任を目指して英語を学び始めた。

 努力の甲斐あってTOEICで高得点、英検でも1級を取ることができた。

 そして、念願のアメリカ駐在と日本への凱旋帰国。


 日本に戻って気がついたのは米国生活を伴にした奥さんの英語力だ。

 専業主婦で特別な英語の勉強をしていなかったのにもかかわらず御主人と同じくらいペラペラになっていた。

 渡米前に通っていた日本の英語学校では1番下のクラスだったのに、帰国後は1番上のクラスだ。

 単にアメリカに住んでいただけでは、こうはいかない。

 その事はオレも身にみて分かっている。


 なんでまたそんなに英語が上達したのか?

 驚いた主人公は奥さんにその秘密を尋ねた。


 すると奥さんの答えはこうだった。


 在米中は英語の新聞や雑誌、小説などを読んでいたのだそうだ。

 毎日、午前中を読書にあてていた。

 暇な専業主婦のなせるわざだとも言える。

 が、ただ読むだけではない。

 声に出して読んでいたのだ。


 午後は奥様方で集まって井戸端会議。

 よくもこんなに下らない話をベラベラベラベラ……

 そう思うのは主人公もオレも男だからだろう。


 もちろん近所の奥様方は全員アメリカ人。

 なので会話も英語になる。

 最初はもっぱら聞き役だったのが、いつの間にか一緒にしゃべっていた。


 英語の音読と英語での井戸端会議。

 どうやらこの2つが英語習得の最強メソッドのようだ。


 井戸端会議はともかく、音読の方は今のオレでも可能だ。

 とはいえ、何を読んだらいいのか?


 ある日、ひらめいた。


 なぜか毎朝6時前に送られてくる "BBC News Briefing" というメールマガジン。

 日本語だと「英国放送協会短報」くらいの訳になるのかな。


 こいつがほどよく短い。

 数えてみると、80語ほどの冒頭があり、その後に50語くらいのニュース要約が2つか3つある。


 試しに音読してみたら、とても読めたものじゃない。

 知らない単語はもちろんのこと、知っている単語でもうまく発音できない。


 そこで、まずは一通り黙読してみる。

 その上で音読するとはるかにうまく読めた。


 それでも知らない単語は知らないままだし、どう読むのか分からない固有名詞も沢山ある。

 そこで、これらを調べた上で再度読むことにする。


 オレが引っ掛かったのは

  soliloquy 独り言

  gratuitous 無料の

  gaffe 失言

  tenure 在職期間

などの単語だ。


 テニュアってのは終身在職権の事だと思っていたが、在職期間という意味でも用いられるようだ。


 単語を調べてから再度読んでみると、かなりスムーズに音読する事ができた。

 最初の1回目とは雲泥の差だ。

 これは効果あるかも!


 でも自分の音読を録音して自分で聴いてみると、耳をふさぎたくなるほど下手くそだ。

 もっと練習しなくては、という気にさせられる。


 ともあれ、この音読メソッドは悪くない。

 今後、毎朝送られてくる "BBC News Briefing" をできるだけ読む事にしよう。

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