第693話 境界知能の男 2
(「境界知能の男」からの続き)
オレが家の近所を散歩していた時のこと。
向こうからやって来た犬にいきなり
ちんまい白い犬で、ポメラニアンだったか雑種だったか。
「勘弁してもらえないかな。オレは忙しいからさ」
そう思いながら犬を迂回して散歩を続けた。
たぶん1分後には吠えられた事すら忘れていたと思う。
「犬に吠えられたみたいなもんなんですよね」
そう言っていたのは美容外科医の
かの高須クリニック創業者の高須克弥の次男になるそうだ。
自身の YouTube チャンネルで境界知能について語っていた時のこと。
医師として診療していると境界知能の人に遭遇する確率は低くない。
境界知能というのはIQでいうと70~84だ。
IQが85~114の平均的知能よりも点数は低いが、69以下の知的障害よりは高い。
境界知能の人は全人口の14%を占めるので7人に1人くらいになる。
普通に生活していたら時々出くわしてもおかしくない程度だ。
が、医療機関に受診する患者に占める境界知能の人は14%より遥かに多い気がする。
おそらく平均的知能の人よりも酒やタバコ、不摂生などで健康を害する割合が高いのだろう。
高須幹弥氏は医師として境界知能の患者に対して説明をする時は時間をかけて分かりやすく話をするよう心掛けているそうだ。
通常なら15分で済む手術説明を1時間かける事もあるのだとか。
彼の話は実感としてよく分かる。
「医師と患者の間に上下関係があってはならない、対等であるべきだ」とオレは医学生時代も卒業してからも習ってきた。
もちろん人と人の関係としては対等であるべきだろう。
だからといって何もかも対等に扱ったら悲劇が起こってしまう。
病状説明の理解には人によって差があるので、それぞれの患者に合わせた適正なペースで話をするべきだ。
誰に対しても15分で説明を済ませようと思うと、患者の理解不足のままに話が終わってしまう事が起こってしまう。
後になって「聞いていなかった」とか「思っていたのと違う」というトラブルに発展することも珍しくない。
15分で済む人と1時間必要な人は分けて考えた方が結局は省エネになるし、医師患者双方ともにハッピーだ。
こんな事を言うと必ず「IQ ごときで人をランクづけするな。それは差別だ」などという
オレも「IQ ごとき」だと思っている。
知能検査などというのは一種のゲームだ。
ストIIの大会があればランクがつくのは当然だけど、成績下位だからといって自らを否定されたみたいに悲観する必要なんか全くない。
それでメシを食っているプロなら別だけど。
ちなみにオレ自身はストIIをやった事すらない。
犬に吠えられたという話に戻す。
境界知能の人が理解不足から相手の言動を誤解して怒り出し、その結果、暴言を吐かれたとしても高須幹弥氏は腹が立たないのだそうだ。
「散歩していて犬に吠えられたみたいなものですから」というのが彼の考えだ。
なるほど、なるほど。
とは言え、吠えられない方がいいので、最初から時間をかけて分かりやすく話をして誤解を生まないようにする。
客商売を長くやっていて自然に身に着いた処世術なのだろう。
大いに納得できる。
これに対して、ホリエモンの考え方はちょっと違っているみたいだ。
(次回に続く)
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