第683話 虚をつかれた男 4
(前回からの続き)
「ちょ、ちょっと。熱が出ているんだったら先に言ってくださいよ」
「はあ?」
「今すぐコロナ・インフル抗原検査やってきてください!」
「あの、MRIはいつ……」
「何を眠い事を言ってるんですか、そんなモンは
そう言いながらオレは電子カルテでインフル・コロナ抗原をオーダーした。
外来ナースが夫婦を救急外来前に案内する。
敷地内に急ごしらえのプレハブが4室あり、検体採取を終えた患者はそこで結果を待つ。
診察室に戻ったオレは念入りに手を消毒してから次の患者を呼んだ。
30分ほどして
表示された番号は細菌検査室のもの。
「先ほど提出された
オーマイガーッ!
2日続けてかい。
これどうしたらいいわけ。
よし、とにかく治療薬を渡して帰ってもらおう。
「先生、僕が調べておきましょうか?」
診療看護師の茨城くんが声をかけてきた。
「おお、頼む!」
コロナ用の治療薬は色々ある。
が、大切な事はこの人がオレの目の前から消えることだ。
どの薬が効くとか効かないとかは
「パキロビットパックは適応じゃないみたいですね。そうするとラゲブリオかな」
「それそれ。オレは奥さんに説明しておくから処方頼む」
そういってオレはプレハブの1室に急いだ。
「沓脱さん」
「ほわ~い」
「奥さんは
「病院の中じゃないかな」
「お手数ですが奥さんを呼び出してくれますか?」
そういうと沓脱さんは携帯から電話をかけはじめた。
「うん、うん。丸居先生が話があるそうやから代わるわ」
そういって携帯をオレに差し出す沓脱さん。
「ちょっと、何やってんですか。僕に携帯を触らせたらダメですよ。コロナがうつるじゃないですか。奥さんにこちらに来てもらってください」
もちろんプレハブの外でだ。
説明している間に院内の薬局に誰かラゲブリオを取りにいってもらう。
「じゃあMRIの方はいつ撮ったらいいんでしょうか?」
この
まずはコロナを治してください。
「コロナが治ってから改めて相談しましょう」
「それでは来週に寄せてもらいます」
「ダメダメ、来月ですよ来月!」
ちょっとでもコロナの可能性がある人は勘弁してほしい。
次の診察なんか来年でもいいくらいだ。
それにしてもコロナに追われた2日間だった。
世間ではコロナは終わったことにされているが、全然そんな事はない。
テレビも全く報道しなくなった。
しかしデータ的には第10波に入っている。
一体、いつまでいつまでこの騒ぎが続くことやら。
(「虚をつかれた男」シリーズ 完)
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