第677話 婚活する男 1

 かつて一緒に働いていたレジデントと、バッタリ出くわした。

 当時はレジデントだったけど、今は専門医も取っているんじゃないかな。

 風の噂に結婚したと聞いていたので、さっそく本人に尋ねてみた。


「結婚したんだって?」

「ええ」

「最近のこと?」

「1年くらいになりますかね」


 ついこないだかと思ったら1年も前の事か。


「その……お相手はどういう人?」

「結婚相談所で知り合ったOLです」


 医師の結婚相手としてOLというのは珍しくない。

 オレの長年ちょうねんの研究によると、お相手の職業は女性医師、看護師、その他が3分の1ずつだ。

 当然、その他の中の大半がOLになる。


 お相手がOLというのはよくある話だけど、結婚相談所で知り合ったという話を男のほうから聴くのは初めてだ。


「おおーっ! 結婚相談所というのはマッチングアプリか」

「いや、もうちょっと厳しいところですね」

「独身証明書とか源泉徴収票のコピーを出したりするわけね」

「それと住民票も出す必要があります」


 男の立場での結婚相談所。

 こいつは興味津々しんしんだぜ。


 そもそも女からの相談内容ってのは YouTube なんかでよく紹介されている。

 結婚相談所のカウンセラーがアドバイスするという企画だ。

 典型的なのはこんな内容になる。


「私は42歳、実家住まいの家事手伝いです。若く見られるので20代に間違えられることもよくあります。相手の男性には多くを望みませんが、自営業でも長男でもなく、結婚後は専業主婦希望なので年収は800万円以上がいいです。それと私の両親が年老いたら介護もしてもらいたいので、体力のある30歳代の方をお願いします」


 これに対してカウンセラーは「『多くを望みませんが』と言いつつ、望みすぎですよ」と直球で返す。

「本気で結婚したいなら、相手に対する条件を50歳代、年収も300万円くらいまで広げましょう。そもそも800万円というのはとんでもない高収入です。あなたも働いて300万円稼げば夫婦で600万円。それなら十分にやっていけます。そのためには就活も並行して頑張ってください」という現実を突きつける。


 YouTube を聴いているとこんな話ばかりだけど、不思議に男性からの相談は取り上げられない。

 ここは1つ、レジデントの経験を根掘り葉掘り尋ねてみるか。

 あっ、もうレジデントじゃないんだけど、まあいいか。


 そうそう、まずは彼のスペックの紹介からだ。


(次回に続く)



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