第668話 プランBを提案する男 6
(前回からの続き)
さらに彼はプランBの延長として北東アジア経済共同体の設立を唱えている。
北東アジア経済共同体構想をおさらいしておく。
・コロナ禍の中、自力でワクチンの開発・大量生産ができたのは米国、EU、中国、インドの4大経済圏だけで、残念ながら日本はできなかった。
・だから地理的・文化的に近くて政治・経済制度の類似している韓国・台湾と組んで北東アジア経済共同体を設立して今後に備えるべし。
そういったものだ。
これについてはオレは3つの理由で賛成できない。
1つめは世間体だ。
日本・韓国・台湾が地理的・文化的に近いって、そりゃそうだろう。
元々が1つの国である大日本帝国なんだから。
だから帝国大学のうちの1つは
設立年からすれば旧帝大である阪大や名大の兄貴分になる。
もし日本・韓国・台湾が組んだらそれは大日本帝国そのものになってしまうじゃないか。
戦後80年近く経っているとはいえ、「大日本帝国」という言葉はまだまだネガティブ・ワード扱いされているとオレは思う。
だから避けた方がいい。
2つめには親日・反日の事だ。
一般に韓国は反日、台湾は親日というイメージがある。
韓国の現政権はあまり反日色を出していないが、今後も続くかどうかは不明だ。
将来的に韓国が反日に回帰する可能性も大いにあるわけで、敢えてそのような国と積極的に組む必要があるのか?
オレはないと思う。
もちろん日韓で共同して非民主国家との紛争に備えるというのは大切な事だと思うが、当面は米国アニキにも参加してもらおう。
3つめには中国と台湾の関係だ。
日本が公に台湾と経済共同体を設立したら、中国が黙っていないはず。
なぜなら中国は台湾を自国の領土の一部だと主張しているからだ。
そして現在は日本も米国もその主張に敢えて異を唱えるような事はしていない。
台湾有事が現実のものとなったときに日本がどのような立場を取るかは別として、平時にわざわざ波風を立てる必要はないとオレは思う。
では、北東アジア経済共同体構想を採用しない場合、将来、新たな疫病が出現した時に日本はどうするべきだろうか。
ワクチンや治療薬の開発・大量生産については自助努力を行い、それがうまくいかない場合には米国を始めとした西側諸国の協力を得て対処するのが現実的だと思う。
もちろん日本が先に開発に成功した場合、その成果を西側の同盟国・友好国にも役立ててもらうべきだ。
以上の理由からプランBにおける北東アジア戦略にオレは賛成しない。
とはいえ、全体として彼の唱えるプランBは面白いアイデアであり、日本がその方向に舵を切ったら面白いのではないかと思う。
(「プランBを提案する男」シリーズ 完)
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