第667話 プランBを提案する男 5

(前回からの続き)


 さて、次のプランBは社会資本産業に関するものだ。

 社会資本産業の主たる例は医療・介護・教育・政府機関などだと彼は言う。

 そして社会資本産業における安定した雇用創出と実質賃金の向上を目指すのがプランBなのだそうだ。


 社会資本産業は「国内需要が無くならない故に地方でも将来確実に生き残る筈の産業だ」とする。

 つまり人がいる限り必要とされる産業だ。

 にもかかわらず厚生労働省は2019年に公立病院と公的病院の25%超にあたる全国424の病院名を公表して再編統合を促しているのだとか。


 オレも公表されている424の病院名リストを覗いてみた。

 幸いウチの病院は入っていないが、知っている病院がチラホラ!

 厚労省的にはダメ病院なのかもしれないが、医療レベルの高さでは大学病院すらしのぐ有名どころも入っている。


 こういった病院は数多くの研究成果を出し、他院から紹介される難しい症例を扱い、また全国の医師たちが一時的に籍を置いて自らの研修をする場でもある。

 にもかかわらず「再編統合だ!」って、それはちょっと気の毒すぎませんかね。


 また、先日の医療事故調査委員会開催の時に専門家を派遣してもらった病院もリストにある。

 現場をよく知る医師が参加してくれたお蔭で非専門医が気づかない視点からのアドバイスを得ることが出来て、事故原因究明に大いに役立った。

 それでも再編統合……って。


 なるほど経営的には赤字かもしれないし、厚労省的には働きが足りないって事かもしれない。


 でも、その働きってのは高齢者の腰痛や不眠を診療したり、夜間の「救急」に対応する事を指すのだろうか。


 他分野の専門家にそういう仕事をさせるのは単なる無駄だとオレは思う。

 日本刀でヒゲを剃るみたいなもんだといえば分かりやすいだろうか。


 また、公的な医療機関というのは災害や紛争に備えて多少の余裕はあった方がいい。

 平時に限度一杯まで働かせていたら、自然災害や紛争などの有事には余力が残っていない。

 もちろんここでいう限度一杯ってのは週40時間労働ではない。

 週80時間労働の事だけど、それについては改めて述べようと思う。


 ともかく「赤字上等!」とまでは言わないが、もう少し医療というものの特殊性は考慮されるべきだとオレは思う。


(次回に続く)


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