第666話 プランBを提案する男 4

(前回からの続き)


 日本の国民の幸福感を上げるためにはどうすればいいのか。

 具体的なところを述べたい。


 前回に「GDPの大小は無視しろ」と言った事と矛盾するが、幸福感のかなりの部分が経済的な問題で占められているのは間違いない。


 というのも厚生労働省が自殺者の増減が景気と密接に関連しているというデータを出しているからだ。

 細かいデータは省略するが、おおよそ以下の通りになっている。

・男性の自殺率は女性の約2倍

・自殺率の推移は完全失業率と連動している


 で、プランBの主張は「富を都会から地方に移転しろ」という事だ。

 本文中では「地方から東京への富の流出を減らす」と表現されているが、同じ事だろう。


 現在、個人の住民税は一律に課税所得の10%(道府県民税4%、市町村民税6%)である。

 よく「自分は〇〇市に住んでいるから住民税が高い」という人がいるが、居住地による住民税の差はないので、その発言は間違いだ。


 さて、地方自治体の収入は個人住民税だけではない。

 法人二税(住民税、事業税)、消費税、固定資産税、その他がある。

 地域に大きな企業があって気前よく法人税を支払ってくれれば潤うし、そうでなければ貧困に苦しめられてしまう。

 貧乏自治体であっても住民が居住している限り行政サービスが求められるのだから、お金は必要だ。


 ふるさと納税は、自分の居住地域以外の自治体を支援しようという趣旨で始まった制度であり、10年以上の歴史を経て現在では世の中に広く浸透している。

 が、残念な事に各自治体の政策に賛同して寄付を行う人よりは、返礼品目当てに寄付先を選択する人の方がはるかに多い。

 かくいうオレもその1人。

 わずか2,000円の負担で何十万円もの返礼品を頂くというのは申し訳ないが、有難い事なので利用させてもらっている。


 とはいえ、ホタテ貝柱を送ってくれる北海道弟子屈町てしかがちょうとか、知覧茶ちらんちゃを送ってくれる鹿児島県南九州市の名前を知るだけでも一定の効果はあるのだと信じたい。

 ふるさと納税の制度も徐々に改善され、いずれは富を都会から地方に移転する有力な手段になるに違いない。


 地方自治体が潤えば、その地域は住みやすくなり、人も増えるのではなかろうか。

 少なくとも若者の流出に歯止めがかかって欲しい。

 そのために、まずは都会から地方への富の流れをつくるべし。

 この点でオレはプランBに賛同する。


 次は地方の社会資本産業について述べたい。


(次回に続く)

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