第658話 「ボックス!」を読む男

 400万部超えのベストセラー「永遠の0ゼロ」の著者である百田ひゃくた尚樹なおきによる青春スポーツ小説が「ボックス!」(太田出版)だ。


 大阪にある恵美須えびす高校のボクシング部が舞台になっている。

 主人公は特進クラスに所属する努力型ボクサーの木樽きたる優紀ゆうき

 その親友で天才型ボクサーの鏑矢かぶらや義平よしへい

 彼らに玉造たまつくり高校の稲村がからむ。

 稲村は才能と努力をあわせもつモンスターボクサーだ。


 あるカクヨム作家が「ボックス!」を「ページをめくる手が止められない」と表現していたが、その通りだと思う。


 で、この作品のどこが面白いのか。

 できれば自分の小説にも生かしたいとオレなりに分析してみた。



ここが面白い、その1 アクションシーンが主体


 オレの好みかもしれないが、情景描写や人物の容姿なんかは必要最低限で十分だ。

 それよりもアクションでつないでストーリーを引っ張って欲しい。

 その点、「ボックス!」はボクシングシーン以外の部分もどんどん話が進んでいく。



ここが面白い、その2 人物の描き分けが秀逸


 主人公の木樽、親友の鏑矢、ライバルの稲村の他にも色々な人物が登場し、それぞれに個性的だ。

 そしてキャラがかぶっていない。

 だから、視点が変わっても感情移入できる。



ここが面白い、その3 ボクシングに関する蘊蓄うんちく


 ボクシングと他のスポーツとの違い。

 プロボクシングとアマチュアボクシングの違い。

 そして、ボクシングと他の格闘技との違いについても登場人物のセリフという形で読者に分かりやすく提示されている。



ここが面白い、その4 予定調和の粉砕


 大抵の小説はストーリーから「最後はこうなるだろう」と予想できる。

が、「ボックス!」は先が読めない。

 でありながら、終わってみれば「この結末以外にはあり得ない」と思わされるものだった。



ここが面白い、その5 伏線の回収が丁寧


 随所に散りばめられた伏線を比較的早く回収し、読者を飽きさせない。

 が、最後の最後に大きな謎が登場した。

 オレが途中で大切な情報を見逃していたのだろうか。

 ただ、他の読者にも謎と認識されているのか、ネットではちょっとした議論になっているようだ。



 この「ボックス!」は読書としても面白いし、小説を書く時のお手本としても勉強になると思う。


 読書時間は上下巻で4時間くらいかな、体感だけど。

 さわやかな読後感を味わいたい時にピッタリだ。

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