第653話 忘年会をする男 2
(前回からの続き)
オレは医師会の勤務医部会で色々な活動をしている。
が、各病院を代表して来ているのはオレのようなチンピラではない。
院長やら教授やら、まさしく代表そのものだった。
また、民間病院から来ているのは理事長たちで、新たに病棟を新築したとか、350人いる従業員の忘年会費用が500万円だとか、そんな話を普通にしている。
そういう人たちを勤務医と呼んでいいのか!
オレはゾウやライオンのいる
ゾウさんやライオンさん達の話題はいつしかコロナ後遺症の話になってきた。
これならオレもついていける。
ゾウさんが言った。
「
なぜ高齢者が後遺症外来を受診しないのだろうか。
「年寄りはね、後遺症の出るようなコロナにかかったら死んでしまいよるんですわ、ガッハッハッハ!」
このゾウさんにしたって、とうに80歳を過ぎているように見えるけど。
もはや別の生き物かもしれない。
「コロナ後遺症には何が効くんですかね?」
テーブルの向こうから声がかかった。
「漢方を使っているけどね、
早速、ライオンさんが賛同した。
「私もね
亜鉛欠乏?
それで味覚障害なんかが出るのかも。
こういう話だとオレも参加できるので、チワワからビーグルくらいには昇格した気がする。
ちなみにビーグルは妻が高校生の時に飼っていたイヌだが、御主人さまの言うことを全くきかなかったそうだ。
それはそうとして。
医者の集まりらしく、コロナ後遺症談義が最も盛り上がった。
「漢方だとか微量元素だとか言うけど、やっぱり良く効くのは睡眠ね。とにかく寝るのが1番!」
これはオレも賛成だ。
睡眠はメンタルを含むあらゆる病気に効果がある。
せっかくなのでオレも自説を披露する。
といっても、抄読会であたったイスラエルの論文の引用だけど。
「ワクチンを打っておくと有意にコロナ後遺症が減るという論文がありましたよ」
イスラエルの大規模調査で分かったことは、ワクチンはコロナの感染率、重症化率、後遺症の発症率のいずれも低下させるということだ。
何しろ世界中の誰に対しても
彼らのデータには
「面白いと思ったのはですね、教育程度や収入とワクチン接種率が比例するっていう部分です」
そう付け加えたら皆が感心してくれた。
日常診療で薄々感じていた事を数字が証明している。
イスラエルにも反ワクチン派はいるのだろうけど、コロナに痛めつけられて散々だ。
もちろんワクチンを打たないという個人の判断はあってもいいし、オレはその考え方を尊重する。
でも、ワクチンを保管しているディープ・フリーザーの電源を引っこ抜いたりするのはやめて欲しい。
そういうのは余計なお世話というものだ。
それにしても医師会では医学的な話題が1番盛り上がるってのが新鮮な発見だった。
お医者さんというのはベンツに乗ってゴルフに行くというイメージを世間に持たれているようだ。
そういう人も
(「忘年会をする男」シリーズ 完)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます