第604話 心理的安全の男 1
先日の学会で「医療従事者の心理的安全性」について語ってくれ、と依頼された。
いわゆる頼まれ講演だ。
心理的安全性というのはずいぶん唐突なお題だ。
調べてみるとハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が1990年代から提唱している概念だ。
彼女は「率直な議論をしても人間関係が壊れないチームが好ましい組織だ」ということを20年以上に渡って説いてきた。
そして「チームが機能するとはどういうことか」、「恐れのない組織」などの本を出している。
が、この心理的安全性という言葉を一気に有名にしたのがグーグルのピョートル・フェリクス・グジバチさんだ。
彼はグーグル社内の研究で、生産性の高いチームに共通するのが「心理的安全性の確保だ」という事を見出し、「心理的安全性 ~最強の教科書~」という本を出した。
やはりグーグルの影響力は大きく「心理的安全性」という言葉が一気に広がった。
実は、ポーランド生まれのピョートルさんは千葉大学で学んでいたことがある。
YouTube で、心理的安全性の1例として「チャック開いてますよ」と流暢な日本語で例をあげていた。
アステリスク(*)で囲んだ部分はアクセントのあるところだ。
これを実際にピョートルさんに言ったら果たして通じるだろうか?
それはさておき、ピョートルさんによれば「チャック開いてますよ」と部下が上司に言うことのできる組織が強いそうだ。
もしそれを指摘しなければ、上司が大恥をかくことになる。
そればかりか大事な商談がパーになるかもしれない。
が、指摘したら「俺に恥をかかせるのか!」と怒られるような上司や組織だと大変だ。
保身のために、気がつかないふりをしておく、という部下が増えてしまうことだろう。
でも組織全体の事を考えると上司にはチャックを閉めてもらうべきだ。
なので、チャックを指摘しても人間関係が壊れない組織を目指す必要がある、というのがピョートルさんの主張だ。
ちなみにオレがチャックを指摘されたらどう答えるか。
それを先日の講演の中で言った。
「ああ、これは開けているんだ」とやったら、思いがけず聴衆にウケてしまった。
「ちょっと風に当てているところでね」と強弁しても良かったかもしれない。
さすがにそこまでは言わなかったけど。
というわけで、エドモンドソン教授とピョートルさんが
(次回に続く)
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