第582話 身体中が痛い男 2

(前回からの続き)


 前回は散歩中に YouTube を聴いていて、思わず声を出して笑ってしまった、という話をした。

 今回は、その内容を語りたい。


 オレが聴いていた YouTube は「高齢婚活女子に婚活カウンセラーが本音でアドバイスする」みたいなタイトルだった。


 婚活カウンセラーは結婚相談所に勤める本職の人だ。

 男性もいれば女性もいる。


 彼らとて客商売なので、普段は会員相手に思った事をそのまま口にするわけにはいかない。

 何重にもオブラートに包んで言うだけだ。

 だから相手に真意が伝わらない。

 今回の YouTube は「婚活カウンセラーが忖度なしに皆さんの相談に応じます」という企画だった。


 まず最初に登場した相談者は42歳、実家暮らし家事手伝いの女性。

 本人によれば、42歳とはいえ若く見られるし、容姿にも自信があるそうだ。

 本人によれば「可愛い系というよりは美人系です」とのこと。

 男性に求める希望条件は、年収800万円以上の30代というものだ。

 さらに結婚したら専業主婦になるのが希望だとか。


 これに対し、婚活カウンセラーはズバリ「高望みです」と一言。


 その根拠を丁寧にいている。


「婚活市場は恋愛市場とは全く違う世界です」とのこと。

 婚活市場は最初にスペックありき。


 男性が女性に求めるのは第1に実年齢。

 平たく言えば、子供を産めるか否か。

 だから42歳の美女でも24歳の十人並じゅうにんなみに全く歯が立たないのだそうだ。

 若く見える事が求められているのではなく、実際に若い事が求められている。


 そして相談者に「高収入を期待してはならない」とアドバイスする。

 年収800万円以上の30代未婚男性みたいな高スペックはレア中のレア。

 たまにいても、すぐに20代の正社員女性が持っていってしまうのだとか。


 ん?


 外見はともかくとして、女性に正社員というステイタスが求められるのか。


 それが求められるのが令和の現実なのだそうだ。

 結婚したら女は家庭に入るというのは昭和の価値観。

 今の男性は共働きが前提だ。

 そもそも高スペック男子は努力して良い大学に入り良い会社に就職したわけで、結婚相手にも努力と自立を求めるのだそうだ。


 42歳まで親に寄生してきた無職女が、結婚によって寄生先を替えようなどという魂胆こんたんは、頭のいい男に簡単に見抜かれてしまう。

 だから選ばれるのは不可能なんだとか。


 あまりにも正論で相談者が気の毒になってくる。

 でも、真実には違いない。


 婚活カウンセラーが言うには、婚活市場における女の価値は実年齢が1番、それから年収とか外見になる。

 同じく男の価値は年収が1番で、それに年齢や外見が続く。


 婚活は総合力なので年齢にハンディがあれば収入で補うべきであり、この女性相談者に対しては「婚活よりも先に就活をしましょう」とアドバイスしていた。

 働いている女性の方が自分の希望が通りやすくなるのだそうだ。



 確かにそれは正しいが、この相談者は手っ取り早い婚活のアドバイスを求めている。


 だから「東大卒の男と結婚したければ、まずは自分が東大に合格しなさい」みたいなアドバイスは、そもそもアドバイスになっていない。


 しかし、さすがに婚活カウンセラーもプロ。


 ちゃんと手っ取り早く現実的なアドバイスも用意していた。


(次回に続く)

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