第555話 ディズニーを見る男

 日本の三大スポーツは何か?


 野球、サッカー、そして卓球だ。

 少なくともオレの YouTube はテニスの10倍くらい卓球が表示される。

 が、本当に卓球がメジャーなのか。


 YouTube の表示は個人ごとにカスタマイズされるそうだ。


 だからオレの YouTube には卓球ばかり出てくる。

 ちなみに妻のは料理とネコ動画ばかりなのだそうだ。


 最近、オレの YouTube にディズニーが表示され始めた。

 特にジャンボリミッキーというアトラクションだ。

 2~3分のショート動画だが、つい最後まで見てしまう。

 すると YouTube は「このオッサン、ジャンボリーミッキーが好きなのか、もっと見せてやれ」と判断するのか、ますます沢山出て来るようになる。


 そうすると、さらに見てしまうので、もうディズニーだらけだ。


 それはそうとしてジャンボリミッキーのどこがそんなに面白いのか。


 ジャンボリミッキーというのはミッキー、ミニー、ドナルド、お兄さん、お姉さんが音楽に合わせて踊る、というものだ。

 会場にいる子供たちやお母さんはもちろんのこと、たまたま通りかかった掃除の人たちも一緒に踊る。


 これがもうプロフェッショナルそのもの。


 結構激しい振り付けだけど、兄さん、お姉さんはまったく息を切らさない。

 そして表情豊かに踊り続ける。


 驚いたのはヘッドセットが不調になった時のこと。

 お姉さんの声が途切れ途切れになった。


 すかさずお兄さんが声をかける。


「お姉さん、マイク取りに行った方がいいかも」


 するとお姉さんは楽屋裏に駆け込む。

 そして、ハンドマイクを持って再登場。

 この間、約20秒ほどだろうか。


 そして「お待たせーっ」とのお姉さんの声に「待ってた、待ってた」とお兄さん。

 引き続きハンドマイクを右手に左手に持ち替えながら踊るお姉さん。


 YouTube 動画のコメントに「マイクが壊れても素に戻ることなく、かといって必要以上にアドリブに走る事もなく台本通りであるかのようなスムーズな進行は本当に流石さすがとしか」とあったが、その通りだと思う。



 このプロフェッショナルさには既視感がある。

 そう、宝塚歌劇団だ。


 残念ながらオレは宝塚大劇場で観た事はない。


 が、宝塚音楽学校の生徒に阪急電車の中で出くわした事がある。

 彼女はシャンと背筋を伸ばして立っていた。

 まるで「年頃の娘さんはこうあって欲しい」と思う我々の願いを体現しているかのようだ。

 学生でありながら紛れもなくプロフェッショナルであった。



 話をディズニーに戻す。


 オレと同じ事を考えている人間が世の中には多いみたいだ。

「迷子になったお父さんはジャンボリミッキーにたまっている」といわれているらしい。


きっと「プロってのはこうあるべきだ。自分も仕事頑張らないとな」って思いながら見ているのだろう。


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