第527話 推敲を重ねる男

 最近、「小説はこう書け」みたいな YouTube をよく聴く。

 いうまでもなく第31回電撃小説大賞応募に備えての事だ。

 役に立つアドバイスが数多くある。


「冒頭で主人公の年齢性別と名前を提示しましょう」


 えっ、それ書いた方がいいの?


 オレ、主人公の名前をつけないまま始めてしまっていた。

 ようやく名前が出たのは第43話になってから。

 できれば「名無し」で済まそうと思っていたくらいだ。


 年齢性別なんか、言わなくても分かるんじゃないかな。

 でも、この調子でいくと、それぞれの登場人物にも年齢性別と名前がいるかもしれない。



「外見描写は2行から4行にしましょう」


 外見描写って2行もいるのか。

 医療現場の事だから、出てくる人は皆、白衣かスクラブなんだけど。

 髪の毛とか顔とか表情とか、色々書いた方がいいのかな。

 客商売をしているオレが人の顔を憶えられないのは、この辺の関心が薄いからかもしれない。



「冒頭で読者の心を掴みましょう」


 これは賛成だ。

 まずは印象的な1文。

 そして読者に「何それ、どうしたの?」と思わせる。

 この辺はオレの小説にも改良の余地がある。



「ミステリーでは『最初に死体を転がせ』と言われています」


 オレの場合、舞台は主に病院だから死体は日常風景だ。

 だから、転がっていてもあまり驚かない。


 ただ、いくらオレでも家の中で死体が転がっていたら驚いてしまう。

 ここは日常と非日常の落差が大切なんだろう。


 病院を舞台とする場合、「転がっていた死体が起きてきた」だと非日常になる。

 ただ、この場合はミステリーではなくホラーになってしまう。


 いや待てよ。


 死体が起きてくることもたまにあるらしい。

 医学的にはラザロ徴候と言われている。

 オレは実際に見たことはないけど。



 という事で、推敲を重ねる毎日だ。


 まずは、取っ散らかってしまった登場人物に名前をつけて、しっかりしたキャラクターにする事から始めよう。

 そして、文字だけで読者の頭の中に絵が浮かぶようにしなくてはならない。

 自分が分かっていても人に伝わらなければ独りよがりってやつだ。



 それにしても勉強の手段が YouTube とは!

 ちょっと情けない気もする。



★読者の皆様。私の書いたエピソードの中で「この話のここが分かりにくい。説明不足だ」というところがあれば、遠慮なく御指摘ください。


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