第511話 コロナを恐れる男

 コロナ患者が増えてきた。


 時間外入院になった患者の各科への割り付けで、4人中3人がコロナということも珍しくない。

 ウチの病院でもコロナ病床が恐ろしい勢いで埋まりつつある。

 そればかりか職員も何人かがコロナで休む羽目になった。


 にもかかわらずスーパーに行ったらマスクをしていない人の方が多い。

 目視で1対3くらいだろうか。

 結局、いくらコロナが流行っていてもテレビや新聞で報道しなければ、存在しない事にされてしまう。


 病院内では患者や見舞客にマスクをつけるよう協力を求めるのは当然だ。

 大抵の人が従ってくれるが、暑いとか何とか言ってつけない人もいる。


 中には暴言を吐く人まで!


「国がマスクはらんと言っとるんや。お前は国より偉いんか!」


 いやいや、オレよりも国の方が偉いです。

 でもね、コロナさんは国の言うことなんか無視しますから。


 そう言ってやりたい。

 言わない理由はただ1つ。

 こういう人たちに言っても理解できないだろう、というそれだけの事。


 高校時代に理科の先生が言っていた事を思い出す。


「いいですか。あらゆる物事の根本は数学です。その上に物理学がのって、その上に化学がのって、その上に生物学がのっているわけです」


 なるほど、と高校生時代のオレは感心した。


 大人になった現在、さらに付け加えたい。


「さらに生物学の上に法律が乗っています。法律は我々全員が守るべきルールではありますが、物理学や化学などの自然の法則の方が優先なのは言うまでもありません」


 オレにとっては明々白々めいめいはくはくの事だ。

 が、世の中の人にとっては、そうではないのかもしれない。


 コロナ第9波はできるだけ小さい山でピークアウトして欲しい。

 医療機関に勤務するものとしては、そう願うばかりだ。


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