第506話 高い授業料を払った男

「判例タイムズ」か何かで読んだ記事。

 記憶に頼って書くので細部が違っているかもしれない。

 が、主旨はこんな感じだった。


 ある高齢女性が健診で便潜血べんせんけつを指摘された。

 かかりつけ医は消化管内視鏡を勧めた。

 なぜなら消化管に癌がある可能性を懸念したからだ。


 が、女性は友人の「あんな苦しい検査はない」という言葉に怖気おじけついて先延ばしにした。


 翌年の再び健診で再び便潜血が陽性となった。

 かかりつけ医は再三検査を勧めたが女性は受けない。


 そんなある日のこと。

 大腸癌が穿孔せんこうし、緊急手術で人工肛門になってしまった。

 あろう事か、女性はかかりつけ医に対し損害賠償請求の訴訟を起こしたのだ。

 もっと強く内視鏡検査を勧められていたら受けていたのに、と。


 ひどい話だ。

 かかりつけ医には1ミリも過失はない。

 医師なら誰でもそう思う。


 が、裁判所は被告に100万円だったかを支払うよう和解勧告をした。


 というのも、訴訟を起こされたかかりつけ医がカルテに「内視鏡検査を強く勧めた」などと書き足していたからだ。

 電子カルテの昨今、いつ誰が何を書いたとか削除したとか、そのログはすべて残ってしまう。

 この、あとで付け加えた1行がカルテの改竄行為かいざんこういとみなされた。


 で、100万円!

 余計な事を書き加えたばかりに高くついてしまった。


 1行につき100万円ですよ。

 随分な授業料だが他人事ひとごとではない。

 もっ他山たざんの石とすべきだな。


 オレも気をつけなくては。

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