第388話 「基地」を作る男

子供の頃。

そう、小学校に行くか行かないかの年齢。


基地を作らなかったか?

そして武器をめ込まなかったか?


オレはやった、友達とともに基地にこもって作戦を練った。


決して別荘ではない。


基地とか武器とか作戦とか。

何かそういうものが男の子のDNAには組み込まれているのだろうか?



母親によれば、オレは「カタナ」と「ピストロ」に夢中だったそうだ。

「ビャオーン、ビャオーン!」と叫びながら「ピストロ」を撃っていたのだとか。

自分ではおぼえていないから物心ものごころつく以前の事だな。


おそらく刀も銃もオレのDNAに組み込まれていたのだろう。

もちろん今ではそんな物騒な物には関わりたくない。



今のオレの武器といえばマイクロ鑷子せっしやマイクロ剪刀せんとうだ。

これらの手術器具は1本数万円、高いのは10万円以上する。

小遣こづかいで少しずつ買ったら、いつの間にか一大コレクションになってしまった。


ステンレススティール製よりチタン製の鑷子の方が良い、とか。

カミヤマは刃が薄くて使いやすい、とか。

フクシマの吸引管はS、M、Lを使い分ける、とか。


まあ、色々なこだわりがあるわけ。



さて、最近になってオレの机には実体顕微鏡がえられた。

ロッカーの奥から引っ張りだしたものだ。

この「基地」でしばらくは吻合ふんごう練習を続けることになった。


1ヶ月後の血管吻合手術を目指して作戦を練る。

毎日やるのは練習というよりも訓練だ。

子供の頃の基地を思い出してワクワクしてきたぞ。


仕事でも勉強でも、男の子には「基地」と「武器」が必要なんだと思う。



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