第381話 花粉にやられる男

オレは重症の花粉症だ。

アレグラという抗ヒスタミン薬の定期内服で予防している。

が、なかなかうまくいかない。


通勤の車の中はいいとして、特にひどいのが外を歩いた直後。

マスクをしていても病院の駐車場から建物の間で花粉を浴びてしまう。

また、帰宅したときも駐車場から家に入るときに花粉にやられる。


くしゃみの後から鼻汁が止まらなくなる。

そればかりか流涙もだ。


だから経口薬だけでなく点眼薬と点鼻薬もフルに使っている。


さらに工夫しているのはアレグラをのむ時間だ。

一般的な朝食後と夕食後というのではタイミングが悪すぎる。

夕食後は薬をのまなくても自然に症状が治まるからだ。


薬をのんでから効き始めるまでの時間を考えれば起床直後にまず1錠。

病院にいて、そろそろ帰るか、と思った時また1錠のむ。

そうするとちょうど必要な時に効く。


夕食後、入浴後、睡眠中はなぜか鼻汁が止まっている。

そして自宅では花粉除去クリーナーを常時全開。


これで何とか花粉をしのいでいたオレに試練がふりかかってきた。

マンションの自治会が花見を計画しているのだ。


せっかく解禁になったのだから近くの公園でお弁当を広げましょう……って。

外で弁当を食べるなんて、考えただけでもゾッとする。


花見なんて、やりたい人だけでやればいいじゃん。

勘弁してもらえないかな。


とはいえ、役員をやっている以上、オレに欠席は許されない。

果たして、花見当日のオレはどうなってしまうのか?


きっと、弁当を運んでいる間に鼻がグズグズいいだすんだろうな。

皆で座ってさあ食べようというときに「ハックション!」


「先生、大丈夫ですか?」

「なに、心配要りませ……ブアックショーン!!」


さすがに開いた弁当の上にくしゃみをするのだけは避けよう。


「もう……帰ります」(泣)


これなら途中で帰っても文句は言われないだろう。


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