第351話 悔い改めた男

夜中に腹痛で目が覚めた。

いわゆる「お腹をこわした」痛みだ。


とりあえずトイレに行き、幾分すっきりして寝床に戻った。


「栓が抜けちまったよ」


我が家ではひどい下痢をしたときに「栓が抜けた」と表現している。


「晩御飯は新鮮な材料しか使ってないのに。何がいけなかったのかな」


妻は真剣に悩んで色々と考えを巡らしているようだ。


ゴメン、実はオレには心当たりがある。

いわゆるジャンクフードのたぐいだ。


妻には言ってなかったが、夕食までに色んな物を食べてしまった。

「ゆず蜜アイスバー」とか「いか天大王」とか「ポテトチップスうすしお味」とか。

こんな悪の誘惑に負けていたら、そりゃあ腹もくだしますわ。


でも妻を悲しませるのは本意ではない。


だからジャンクフードとの決別を誓う。

半分ほど残っていた「いか天大王」も「ポテトチップスうすしお味」も黙って捨てた。


そもそも人間の不幸というのは食べ物に由来する部分がかなり多い。


ジャンクフードを食べる、とか。

空腹でもないのに何か食べてしまう、とか。

食べ過ぎてしまって自己嫌悪に陥る、とか。


だからオレは正しいものを少量だけ食べることにした。

心なしか体が軽くなったような気がする。


まだ実行初日だけど。


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