第343話 警察に踏み込まれた女 3
(前回からの続き)
ということで、警察役が捜査を再開した。
「えっと、輸液ポンプとやらの設定を間違えた看護師さんやったかな。ここに呼んでくれる?」
「呼んでどうするんですか!」
「どうするって……話を聞くだけやないか」
「あの子は疲れていたから帰らせました」
「帰らせたって、自宅に帰したんか?」
「寮ですよ」
「おいおい、まさか1人暮らしの部屋に帰したんか?」
「そうですよ、何か不都合でも?」
「何をやっとるんや、師長。目を離したら首を
またまた
こういう時は「別室に人をつけて待機させています」というのが正しい対応だ。
「師長は親代わりやろ。当事者を1人にしたら何しよるか分からんぞ」
「……」
「帰すんやったら人をつけるか実家にしとけよ。使えんやっちゃな!」
「すみません」
「もし自殺なんかされたら
いくらロールプレイとはいえ、ここまでコテンパンにやられたらショックだろう。
師長役は涙ぐんでいた。
警察としては貴重な証拠を失ってしまうことを何よりも恐れる。
当事者が逃亡したり自殺を図ったりなんてことは論外だ。
そんな状況なので、「医療事故発生時の警察対応」、最初のグループは散々だった。
とはいえ、人の振り見て我が振りなおせ、という
後のグループになるほど上手く対応できるようになってきた。
「いいですか、警察の目的は事件の概要を把握する事、そして証拠を確保する事ですから、相手のニーズに合わせて対応しましょう」
もう1つ、肝心な事について念を押しておこう。
「それと『
オレは続けた。
「私が思うにはですね、入院している患者さんにとっては絶好の娯楽ですよ、日頃から
実際、こんな事くらいで病状が悪化したというのは聞いたことがない。
「だから、そこは気にしなくていいです。普段から誰に対しても親切に接しておくにこしたことはないですね。いいですか?」
「はい」
素直な声が一斉に返ってきた。
本番では、このシミュレーション通りに事が運ぶとは到底思えない。
が、1回やっておくのとそうでないのとでは大違いだ。
実際に起こったときには落ち着いて対応して欲しいと思う。
それにしても、5日間の医療安全管理者養成講習会はまだまだ続く。
プログラムを作るのも大変だったが、実際に行うのも大変だ。
だけど手を抜くわけにはいかない。
熱気あふれる講習会の様子を順に
(「警察に踏み込まれた女」シリーズ終了)
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