第330話 セーラー服を着る男

先日のこと。

附属看護学校の一般入試があった。


看護学校の入学試験は一般、推薦、社会人と3度行われる。

このうち一般入試は卒業見込みの高校生が大半だ。

高校生たちはそれぞれの高校の制服を着用して面接試験に臨む。


「今どき珍しいですね、セーラー服は」


面接した受験生の背中を目で追いながら看護部長がオレに声をかけてきた。

我々は一緒に面接官をしている。


「最近はブレザーがメインかな。僕の高校はセーラー服だったけど」

「私のところはブレザーでしたよ」


オレが卒業した高校は紺の生地で襟のラインは黒。

今でもウン十年前の在校時と変わっていないみたいだ。


そもそもセーラー服というのは sailor(船乗り、水兵)のユニフォームが由来だ。

だから諸外国の人が見たら「日本の女子高生はなんで軍服なんか着ているわけ?」と思うことだろう。


逆にユニフォームを着た米海軍の人たちを我々が見ると、コスプレかな、と思ってしまう。

そのくらい日本人にとってセーラー服は見慣れた風景になってしまった。



さて、面接では色々な事を尋ねる事になっている。

が、高校生相手だと当たり障りのない問答にならざるを得ない。

看護観だとか、そういうものが高校生にあるはずもなく。

クラブ活動だとか、得意な学科だとか、高校時代に頑張ったことだとか。


実際は質疑応答の内容よりも表情を見てしまう。

人を相手にする仕事なので、そちらの方が大切といえば大切だ。

だからニコニコしている人には点が高くなってしまう。

逆に無表情な人は怖い気がするので点数が上がらない。


ま、将来、一緒に働く人間としては明るい方がありがたいのは確かだ。

文句を言ったり人の悪口を言ったりしていると暗い職場になってしまう。


オレも自らを省みる必要がある。

自分自身が職場を暗くしていないか否か。


皆が機嫌良く働ける職場はきっと生産性も高いのではないかと思う。


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