第329話 クラムチャウダーの男

アメリカの東海岸ではクラムチャウダーが名物だ。

特にボストンは貝を具とした白いクリームスープが定番。

これをニューイングランド風クラムチャウダーという。


一方、ニューヨークだと赤いトマトスープのクラムチャウダーになる。

こっちはマンハッタン風クラムチャウダーと呼ばれる。


そういった予備知識を持った上でオレの体験を紹介したい。

オレがアメリカに留学している時にクラムチャウダー大会があった。

とある町の大広場に5つの軍艦の炊事担当者が集まり、腕を競うのだ。

各艦自慢のニューイングランド風クラムチャウダーが振る舞われた。

もちろん1人前ずつ5種類食べると多すぎる。

なので小さめの紙コップで食べた。


それぞれ「USS Helena」等というテントが張ってあって、そこでもらっては食べるのだ。

因みにUSSというのは United States Ship だから、直訳すると「米艦船ヘレナ」となる。

実際にはロサンゼルス級の原子力潜水艦だ。


さて、同じクラムチャウダーといっても結構、船ごとに味が違っている。

美味いか否かというより、自分の好みにあっているか、かもしれない。


考えてみれば軍隊というのも人の集まりだから、かならず食事は必要だ。

特に船の場合は一旦海に出ると食事だけが楽しみになる。

だから炊事担当者は手を抜くことができない。

限られた予算で最大限の工夫をして美味しい食事を作っているそうだ。


もちろんオレは5つの軍艦すべてのクラムチャウダーを試食した。

もう少し塩味が欲しいのもあれば、濃厚すぎるのもあった。


で、「さすが米軍!」と思われる事があった。


なんと広場には仮設トイレが設置してあったのだ。

2つとか3つとかではなく、20~30くらいだろうか。

やはり人間、食べると必然的に出したくなる。

それを抜かりなく準備しているのが素晴らしい。


日本だとどうしてもトイレは後回しにされがちだ。

でも、数百人が集まれば必ずトイレ問題は発生する。

この問題を無視すると阿鼻叫喚は必発だ。


それを予測し備えておく周到さ。

決して米軍と戦ってはならないと思わされた。

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