第319話 風俗に行った男 2

(前話から続く)


さて翌日の事。


どう考えても見落としをしてしまったオレは反省しきりだ。

もう1度患者の訴えを並べてみよう


・シャワーを冷水にしている

・額に汗をかく

・冬でも半袖

せてきた

・1日に3リットルくらい水を飲む


これ、甲状腺機能亢進症そのものじゃん!


甲状腺機能亢進症で激ヤセして髄液漏出ずいえきろうしゅつが起こったとすれば綺麗に説明がつく。


じゃあ赤血球が600万以上ってのは合うのか?

スマホで調べてみると、多血症の原因は色々ある。

喫煙、睡眠時無呼吸症候群、エリスロポエチン産生腫瘍、真性多血症、そして甲状腺機能亢進症も!



ということで病院に出勤したオレは直ちに検査室に電話した。

ラッキーなことに昨日の採血の残りで甲状腺機能を調べてくれるとのこと。

それならわざわざ患者に来院してもらう必要もない。

調べるべきは甲状腺刺激ホルモンTSH甲状腺ホルモンf-T4だ。


で、結果は?


TSHは3.25で基準値内。

f-T4は1.95で異常高値。

……といっても基準値が1.10~1.81なのでやや高い程度。


「ビンゴ!」と叫ぶほどではない。


普通の甲状腺機能亢進症ならTSHはゼロ・コンマ・ゼロ幾つ、f-T4は3.5とか7.2とかいう数値になるはず。

この人の甲状腺の数値はマイルドすぎるんじゃなかろうか?


とはいえ症状があるのだから何らかの治療は必要だ。

だから、かの風俗青年に電話して来週に再度来てもらうよう頼んだ。

一方、詳しい診断や治療は専門の内分泌内科医に依頼しておく。


果たして普通の甲状腺機能亢進症なのか。

あるいは亜急性甲状腺炎など、変わったタイプの疾患かもしれない。

ひょっとすると新しい病気なのだろうか。


興味は尽きない。


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