第188話 橋脚が網膜に焼き付いた男
その昔、オレはゲームを作っていた。
ニンテンドーDSの時代だ。
スマホはまだ普及しておらず、オレ自身も持っていなかった。
ゲームといってもドラクエやFFの
プレーしているうちにいつのまにか医学的知識が増えるというものだ。
とある出版社が心電図の勉強で出したゲームがバカ売れした。
それでシリーズ化し、次々に新しいものを出すことになったのだ。
で、前から勉強になるゲームがあったらなあ、と思っていたオレは飛びついた。
ぜひ、オレに作らせてくれ、と。
とあるメーリングリストで仲間を募ったところ20人の医師が手を挙げてくれた。
で、それぞれの専門に応じてタスクを振り分けるつもりだった。
が、20人もいれば、それぞれの熱意や姿勢もバラバラだ。
何もしない人はまだいい方で、連絡が取れなくなる人まで出て来る始末。
一方で何人かの仲間は熱心だった。
で、出版社やゲーム開発会社とともに構想を考え、細部をデザインし、中身を作った。
やると言った以上、やり遂げるしかない。
99%できたけど最後の1%を詰めることができずリリースできませんでした、ということになったら大変だ。
切腹して詫びるしかない。
だから、たとえオレ1人になってもやるつもりだった。
皆が作ってくれた問題やミニゲームをまとめるのがオレの役割だ。
休日はすべて出版社に行って、その作業に没頭した。
1日の終わりには進捗状況を書いたレポートを皆に送った。
出版社でいつもオレが使っていた部屋は目の前に高速道路があった。
PCのモニターから顔をあげると窓を通してその道路が見える。
道路の
というわけで、1年がかりで完成させることができた。
最初に仕様を決めて、後はひたすら中身を作るだけだった。
だからゲーム開発会社にはあまり迷惑をかけていなかったと思う。
一方、出版社の担当者には休日出勤を強いる結果になった。
でも案外、効率よく管理していたのかもしれない。
というのも、休日に出版社に行くと別の部屋に別のゲーム作成担当の医師が
最後に、売れたか否か?
そこそこ売れたんじゃないかと思う。
というのも20人の仲間はその貢献度に応じて数万円から数十万円の印税を受け取ったからだ。
中には、印税を受け取るのは不本意だと言って、そのまま勤務先の病院に寄付した先生もいた。
オレの考え方とは違っているが、立派だと思う。
でも、1人で作った心電図ゲームの方は売れに売れて、印税は数千万円になったとのこと。
世の中、そんなもんだ。
カクヨムでソシャゲ開発の大炎上プロジェクトについての小説を読んで、ふと思い出したので、自分の経験を披露させてもらった。
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