第156話 泣きながらOS-1を飲む女
何とか午前中の
総合診療、いわゆる総診の外来は週1回。
最初は人手不足の手伝いをしていただけだが、いつの間にかレギュラーになった。
1人1人全員が違う主訴なので、時間がかかる。
脳外科なら午前中に20人を診察することもあるが、総診は10人が限度。
終わったらヘロヘロだ。
そう思いながら昼食を
外来からだ。
「ギリギリで来た初診の患者さんがいらっしゃいます」
オレの安息は
「すぐ行きます!」
ガッカリしながらも、口が自動的に
手元の電子カルテでチラッと確認すると熱中症みたいだ。
歩いて外来受診するくらいだから、すでに回復しているのだろう。
「8
外来に行くとナースに言われた。
午後診が
診察室に入ってきたのは若い女性だ。
しくしく泣いている。
「事務所のクーラーが壊れてしまって。できるだけ
一般に若い人の方が高齢者より
言っていることも理解しやすい。
「どうも、皆さんにはいつもお世話になっています」
有名な宅配会社のユニフォームを着ていたので、そう声をかけた。
「それにしても暑い中、大変でしたね」
すると彼女は
「すぐに倉庫の方に連れていってもらって……そこが1番風が通るので」
そう言いながら、ペットボトルの水を1口飲んだ。
「水分摂取はできているようですね。午後からは家に帰って冷房に当たって下さい」
事務所のクーラーが壊れてから数日間、皆で工夫して暑さに耐えていたとのこと。
職場にはOS-1を常備していたが、ついにやられてしまったわけだ。
「診断書も作成しておきましょうか?」
「上司が一緒に来て待っているので、聞いてみます」
「良かったら診察室に入ってもらってください」
中年男性が恐縮しながら姿を現す。
「新しいクーラーを買って、今晩設置することになりました」
「それが良さそうですね」
「労災で申請しようと思いますので、診断書をお願いします」
有名な会社だけあって、ちゃんと労災の事まで考えているようだ。
「今日は午後から仕事を休んだ方がいいと思いますよ」
「いつから職場復帰できるでしょうか?」
「体調に問題なければ明日には復帰可能です」
そういうと上司はホッとした顔になった。
「とにかく熱中症ってやつは自覚症状がないので、注意するにこしたことはありません」
「……」
「おかしいと思ったら、今回みたいに早めに涼しいところに避難して水分摂取をしてくださいね」
こういう時には説教しても仕方ないので、相手の行為を正当化しておこう。
それにしても今年の夏の暑さは異常だ。
節電なんかやっている場合じゃない。
あらゆる文明の
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