第141話 SMSを送ってきた女

以前、くも膜下出血で開頭手術をした女性からSMSが来た。

コロナにかかって頭痛と倦怠感が強いとのこと。


彼女は医療従事者だが、ずいぶん前に実家のある地方に引っ込んでいた。

1~2年に1回、オレの外来を受診する程度だ。


だから、今回はSMSでアドバイスを求めて来たのだ。


しかし、このSMSというやつ、オレのiPhoneではうまく返信できない。

仕方ないので、もう直接携帯に電話した。


「基礎疾患も年齢もハイリスクだから治療の対象だと思いますけど」

「いや、特にそんな話はなかったですよ」


あれれ?


なんでも8日前に発症して以来、自宅で静養中。

保健所も通院している病院の医師も治療の話は無かったそうだ。


リスクがあればベクルリーの点滴、ラゲブリオかパキロビッドパックの内服を使う。

点滴なら発症から7日以内、内服なら5日以内に投与することになっている。

残念ながら、彼女の場合は投与時期を過ぎてしまっていた。


「勤務先病院の師長さんに相談して、明日、内科の先生に診察してもらうことになりました」

「何はともあれ、それは良かった」


治療適応の時期をいっしたことを一応説明しておいた。


「過ぎたことは仕方ないので、内科の先生に現状を報告しましょう」

「分かりました。本当にどうも有難うございます、先生」


それにしてもコロナ治療は地域や病院によってずいぶん違っている。

ウチの病院なんか、感染した職員にバイク宅急便で内服薬を送っていた。


とはいえ、他所よそがどうとか考えている余裕もない。

かかわった人を何とかするのがオレの仕事だ。


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