第129話 銃で撃たれた男

 2022年7月8日、安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃された。


 今日の昼過ぎのことだ。

 カンファレンス室に行くと、何やら皆が雑談している。


「奈良医大か」


 そう言いながらスマホを見ている人間に声をかけた。


「どうかしたの?」


 そうしたら思わぬ答えが返ってきた。


「安倍首相が散弾銃で撃たれたらしいですよ」

「ええっ!」

「心肺停止みたいですね」

「なんとまあ……」


 外傷による心肺停止はほぼ助からない。


 が、法律上、医師でなくては死亡確認を行うことができない。

 そのままヘリコプターで奈良医大に運んだみたいだ。

 ニュースによると午後0時20分に到着したことになっている。


 オレは帰りの車の中で海外の英語ニュースを聴いてみた。

「シンゾー・アベの生命徴候バイタルはないが、公式には死亡と宣告されていない」

「何年も日本に住んでいるが銃撃などというのは組織犯罪くらいで、それも数えるほどだ」

 などとレポーターたちが解説している。


 午後5時3分に安倍元首相が死亡したと続報があった。

 昭恵夫人が病院に入ったのが午後5時前ということなので、奥さんの到着を待って死亡確認を行ったのかもしれない。


 外国人レポーターたちは、日本が極めて安全な国であることを強調していた。

 しかし、今後の日本がどうなっていくのか、誰にも分からない。


 1人の国民として自らの考えを述べるなら、オレたちが一生懸命支えている社会を脅かす存在に対しては、厳罰でのぞむべきだと思う。

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