第78話 コンビニで働いている男

世の中に欠かせない難しい仕事をしているのに、あまり報われてなさそうな仕事がある。


介護、コンビニ、スーパーだ。


「お前やってみろ」と言われても、オレにはできる気がしない。


介護は医療の隣の業界だから、まだ少しはできるかもしれない。


でも、コンビニとかスーパーのレジ打ちだとかは無理だ。

複雑怪奇なレジ打ちをやりながら接客って。

それ、難し過ぎだ!


そもそもコンビニのお客さんも色々な人がいるに違いない。

乱暴者とか高齢者だとか。


もちろん病院にも乱暴者は来るし高齢者の数はどこよりも多い。

トラブルもしばしば起こる。


しかし、医療現場の中であれば何とか対応することは可能だ。

困ったときに応援を呼ぶこともできる。


しかし、コンビニで乱暴者にタバコを注文されたらどうする?


「おい、17番を2箱くれ!」


オレはつい無用な説教をしてしまうんじゃないかな。


「やめておきましょうよ、タバコは体に悪いですから」


そんな事を言われたら乱暴者は怒り狂うだろう。


「はあ? 何言ってんの。はやくしろよ、この野郎!」


そしたら口が勝手にしゃべっちゃうよ。


「やめないまでも、少しタバコを減らすことも考えてみませんか?」


これまでの人生、診察室で何百回この台詞を言ったことだろう。


「売るつもりがないなら、何で置いてんだよ!」


そりゃそうだ。

体に悪いものなら売らなきゃいい。


確かに病院内のコンビニにはタバコは置いていないし。



乱暴者の相手はともかくとして。

オレにはコンビニ店員は到底できそうにない。


外国から日本にやってきてコンビニで働いている人たち。

世間がどう思っているか知らないが、オレは密かに尊敬している。


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